室生寺
宇陀市、太古の外輪山に囲まれた室生山麓に佇む室生寺は、真言宗室生寺派の大本山です。
この寺院の最大の特徴は、真言密教の総本山である高野山が、かつて明治時代に入るまで厳格な女人禁制を敷いていたのに対し、女性の参詣を許していたことから、古くから「女人高野(にょにんこうや)」として信仰を集めてきた点にあります。
この歴史的背景は、悩みを表に出すことが難しかった当時の女性たちにとって、どれほどの救いであったかを物語っており、現在も参拝者の多くを女性が占めています。
室生寺は、その歴史と文化財の価値が評価され、2020年には日本遺産に認定されています。
悠久の歴史と水の神の聖地
室生寺の創建は、奈良時代末期、興福寺の僧・賢憬(けんけい)が東宮(後の桓武天皇)の病気平癒を願ったことに始まると伝えられています。
また、この地は古来より渓流が室生川に注ぎ、龍神と呼ばれる水の神が祀られる祈雨の聖地として崇められてきました。
寺の歴史の節目には、江戸時代に第5代将軍徳川綱吉の生母である桂昌院の庇護を受けて堂塔が修繕・再興されたことが挙げられ、この再興が女人高野としての地位をより確固たるものにしたと言われています。
- 金堂(国宝・平安時代前期)
深い木立の中に建つ柿葺きの堂で、その内部には国宝の仏像群が安置されています。
本尊の木造釈迦如来立像(国宝)をはじめ、優美な姿が印象的な木造十一面観音菩薩立像(国宝)など、平安時代初期(貞観時代)の優れた木彫仏5体が並びます。これらの仏像は、穏やかで女性的な表情を持つものが多く、「室生寺様」と呼ばれる独特な彫法も見られます。 - 五重塔(国宝・平安時代初期)
室生寺のシンボルであり、屋外に立つ古塔としては日本最小(高さ約16m)の国宝です。
その優美で可憐な姿は、周囲の豊かな自然と見事に調和しており、多くの人々を魅了してきました。
法隆寺の五重塔に次ぐ古さを誇り、平安初期の様式を今に伝える貴重な建築物です。
1998年の台風で甚大な被害を受けましたが、全国からの支援により見事に修復されました。 - 本堂・灌頂堂(国宝・鎌倉時代前期)
急な石段「鎧坂(よろいざか)」を上りきった先にあるのが、真言密教の重要な儀式「灌頂」を行うために建てられた本堂です。
懸造(かけづくり)の構造が特徴的で、堂内には重要文化財の如意輪観音坐像が安置されています。
この仏像もまた、ふっくらとした質感と優しい表情で、女性参拝者の心を癒し続けています。
| 住所 | 〒633-0421 奈良県宇陀市室生78 |
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| TEL | 0745-93-2003 |
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