大手アパレルのオンワード樫山が経営する手打ち蕎麦屋です。

フランスの首都パリ、歴史と文化が息づくサン＝ジェルマン＝デ＝プレ地区に店を構えるYen（エン）は、洗練された雰囲気の中で本格的な日本の食文化に触れることができる日本料理店です。2000年のオープン以来、この店はリヴ・ゴーシュ（セーヌ川左岸）において、日本人が守り伝えてきたそばの伝統を忠実に再現する場所として、確固たる地位を築いてきました。ミニマリズムの美意識に基づいた落ち着いたデザインの店内は、二階建ての造りとなっており、木材を多用した内装が都会の喧騒を忘れさせてくれるような静かで穏やかな空間を作り出しています。

Yenの最大の魅力であり、譲れないこだわりとなっているのが、日本が誇る伝統食である手打ちのそばです。このお店では、そばへの絶対的な本物志向を貫いており、そば粉をわざわざ日本から輸入しています。そして、そば粉の風味を最大限に引き出すために、店内で毎日、伝統的な石臼を使ってそば粉を挽くところから手作業で行っているのが大きな特徴です。専門のそば職人が日本の師のもとで訓練を受け、何世紀にもわたるそば作りの技法を守り続けています。そのそば打ちの工程は、時としてお客様の目にも触れるように行われることがあり、日本の食に対する真摯な姿勢が、パリの美食家たちをも魅了してやみません。こうして作られるそばは、温かいものと冷たいものの両方で楽しむことができ、その完璧な食感とそば粉の持つ繊細な香りは、まさに至福のひとときをもたらしてくれます。特に、だしが効いたつけ汁でいただく冷たいそばは、その喉越しの良さと奥深い旨みが際立つ逸品です。

そばと並んで人気の高いメニューには、新鮮な魚介を使った寿司や刺身の盛り合わせがあります。季節の市場からの仕入れに合わせた鮮魚が提供され、その時期ならではの味覚を堪能することができます。また、Yenの洗練された和食を象徴するメニューとして、世界的な人気を誇る黒鱈の味噌漬け焼きもございます。丁寧に味噌に漬け込まれた黒鱈は、じっくりと焼き上げられ、口の中でとろけるような食感と、上品でコクのある味噌の風味が絶妙に調和しています。

さらに、そば以外の料理にも、日本の繊細な技が光ります。季節の野菜や海老を軽やかに揚げた天ぷらは、サクサクとした衣の食感と素材本来の味わいが楽しめると評判です。贅沢な一皿を求める方には、厳選された日本の和牛ステーキも用意されています。柔らかくジューシーな和牛の旨みが、日本料理ならではのアプローチで引き出され、特別な日のディナーを華やかに彩ってくれます。お食事の締めくくりには、パリで活躍する日本人パティシエ青木定治氏による抹茶のロールケーキなど、和の要素を取り入れた特別なデザートが並ぶこともあります。和食の品格を保ちつつ、フランスの美食文化と見事に融合したYenの料理は、パリにおける日本の味を伝える確かな存在感を放っています。お料理と共に、厳選された日本酒やフランス産の高級ワインが揃えられた充実したドリンクメニューも、この店でのひとときをより豊かなものにしてくれるでしょう。

パリ11区、活気あふれるオベルカンフ地区にお店を構えるOBER MAMMAは、本場イタリアの「マンマの味」を陽気に味わえる人気のトラットリアです。フランスで2015年に創業したBig Mamma Group（ビッグ・マンマ・グループ）の、2店舗目として開業しました。グループは「東ママ」を意味する1号店「East Mamma」の成功に続き、「上ママ」を意味するこちらの店で、パリジャンたちを本格的なイタリア料理の虜にしました。料理のモットーは、イタリアの小規模な生産者たちと情熱的に直接取引し、仕入れた旬の食材だけを使うこと。イタリア全土から厳選した高品質の食材を使い、伝統的な調理法で、心温まる料理をお届けしています。

お店の大きな特徴は、その開放的で魅力的な空間デザインです。特に奥のダイニングルームには、壮麗なガラスの天蓋が広がっていて、その下には等身大の木が堂々とそびえ立っています。自然光が降り注ぐこの場所で食事をすれば、まるでイタリアの陽光を浴びているような気分になれるのではないでしょうか。店内にはアイコン的なバーも設けられていて、食事の前にはイタリアらしい「アペロ」（食前酒）の時間を楽しむこともできます。ここでは、Spritz（スプリッツ）やNegroni（ネグローニ）といったカクテルをはじめ、イタリア産のワインも豊富に取り揃えています。また、お店に入ると、大きな薪窯のあるオープンキッチンが目を引きます。ここでは、シェフたちがナポリピッツァを焼き上げ、毎日手作りの生パスタ（パスタ・フレスカ）を丁寧に準備しています。Big Mamma Groupのこだわりとして、イタリアの生産地から調達したフレッシュチーズなどの食材を、最短で生産から36時間以内に届けるというサプライチェーンへの強い情熱があり、これにより高品質で新鮮な食材の提供を可能にしています。スタッフの伝染するような明るい笑顔も、この成功物語の真の隠し味と言われています。予約席の他に、気軽に立ち寄るお客様のために予約なしのテーブルも用意されているので、賑やかな雰囲気の中、イタリア気分で楽しいひとときを過ごせます。

メニューは季節の移り変わりにあわせて約3ヶ月ごとに入れ替わるため、いつ訪れても旬の味覚に出会えます。お店のスター的な存在といえば、薪窯で焼く本格的なナポリピッツァと、毎日手作りされる生パスタです。パスタ料理の中でも特に評判なのは、たっぷりのトリュフを使ったLa fameuse pâte à la truffe（有名なトリュフパスタ）。マスカルポーネとトリュフクリームを絡めたマファルデという波打つ形のパスタに、季節の生トリュフを贅沢に削りかけて仕上げる、香りがたまらない一皿です。また、クラシックなレシピに忠実なThe great carbonara（最高のカルボナーラ）も人気があります。これは、卵黄、クリスピーに焼かれた豚肉の頬肉（グアンチャーレ）、ペコリーノチーズ、パルミジャーノチーズ、黒胡椒のみで作る伝統的なカルボナーラで、シンプルながらも食材の良さが際立つ逸品です。前菜には、イタリアから直輸入されたBurrata（ブッラータ）やstracciatella（ストラッチャテッラ）といったフレッシュチーズや、ピエモンテ産のTomino rôti du Piémont（ローストトミーノチーズ）、ナポリの伝統的なpoulpe alla Luciana（ルチアーナ風タコ）など、トラットリアらしい温かい料理が並びます。そして、食後のデザートは、お店のアイコンにもなっている自家製のtiramisù（ティラミス）が外せません。イタリアの陽気で温かいおもてなしの心と、本物の食材が織りなす極上のイタリアの味を、心ゆくまでお楽しみください。

ラデュレ ロワイヤル店は、世界中から愛されるフランス・パリの老舗パティスリー、ラデュレの原点ともいえる歴史的なお店です。1862年にルイ＝エルネスト・ラデュレ氏が、当時高級職人たちが集まるマドレーヌ地区のロワイヤル通り16番地に、もともとブーランジュリー（パン屋）を開いたことから歴史が始まりました。その後、1871年の火災を経てパティスリーとして再出発し、このとき、内装は有名なポスター画家ジュール・シェレによって手がけられました。彼が天井に描いた「パティシエ天使」のフレスコ画は、ラデュレを象徴する美術的なモチーフとして、今もお店を優雅に飾っています。創業者の妻、ジャンヌ・スシャール氏が、女性たちが自由に集える社交の場として、パティスリーとカフェを融合させた「サロン・ド・テ」（ティーサロン）をパリで初めて考案したことも、このロワイヤル店が果たした大きな功績として語り継がれています。

このお店を訪れる最大の楽しみは、その息をのむほど美しい装飾です。お店の歴史的なアドレスは、幾度かのリニューアルを経ながらも、創業当初のベル・エポックの優雅なムードと、ナポレオン3世様式の特徴を大切に守り続けています。近年行われた改装では、デコレーターのコーデリア・ドゥ・カステラーヌ氏が内装を担当し、ラデュレのシンボルカラーであるセラドングリーン（青磁色）のボワズリー（木製パネル）や、ゴールドの装飾を基調とした、18世紀の装飾芸術を思わせる洗練された空間を創り出しました。特に、2階には趣の異なる「シャンティイ・サロン」や「ナポレオン・サロン」といったサロンがあり、それぞれに繊細な壁紙や布張りの天井が施され、訪れるお客様を優美な非日常へと誘います。ラデュレでは、こうした歴史と芸術が融合した空間で「フランス流美しき生活」（L’art de vivre à la française）を体感できるのが、他にない大きな特徴です。

ラデュレの名を世界に知らしめたのが、色とりどりのマカロンです。2枚のさくさくとしたビスキュイ（生地）の間に、風味豊かなガナッシュ（クリーム）を挟む、私たちがよく知るこのマカロン・パリジャンのスタイルは、20世紀初頭に創業者のいとこであるピエール・デフォンテーヌ氏が考案し、このお店から世界へと広まりました。定番のフレーバーの中では、優しい香りが広がるローズや、まろやかなナッツの風味が楽しめるピスタチオ、そして濃厚な味わいのバニラなどが特に人気です。常時10種類以上のフレーバーが並び、季節やイベントごとに登場する限定フレーバーも大きな魅力となっています。

ロワイヤル店には、ブティックだけでなく、朝食からランチ、午後のティータイム、夕食まで楽しめるサロン・ド・テが併設されており、終日を通して利用できます。マカロンと並ぶ人気のパティスリーでは、ライチとバラ、フランボワーズが織りなす華やかな香りのイスパハンや、シュー生地とバラ風味のクリームが上品なサントノレ・ローズなどが、ラデュレの美意識を伝える代表的なお菓子として親しまれています。この歴史的な空間で、美しい器で提供される紅茶やパティスリーをいただく時間は、パリでの旅の忘れられない思い出になるでしょう。サロンの混雑を避けるため、特に週末や午後の時間帯に訪れる場合は、予約をするか時間に余裕をもって来店されることをおすすめします。また、店内の装飾は繊細な美術品でもありますので、他のお客様や店内の雰囲気を尊重し、写真撮影の際はマナーを守って楽しんでくださいね。