岐阜県高山市の古い町並みにほど近い場所で、高山中華そばの原点として名高いお店が、こちらのまさごそばです。昭和13年（1938年）に創業して以来、地元の皆様はもちろん、多くの観光客にも長く愛され続けている名店です。創業者の坂口時宗さんは、東京のホテルで中華そばの製法を学ばれた後、高山の料亭で日本料理の修行をされました。その日本料理の出汁を活かす知恵と、学んだ中華そばの技術が融合して、屋台からこのまさごそばの歴史は始まりました。JR高山駅からは歩いて10分足らずの場所にあり、その伝統の味を求めて、連日多くのお客さんが訪れています。

このお店の最大の特徴であり、高山ラーメンの大きな特徴として語り継がれているのが、スープの作り方です。一般的なラーメンでは、豚骨や鶏ガラ、魚介、野菜などからじっくりと煮出した「だし」と、醤油や塩をベースとした濃縮された調味料である「かえし」を、最後に丼の中で合わせてスープを完成させます。しかし、まさごそばをはじめとする高山ラーメンでは、この「だし」と「かえし」を最初から寸胴の中で一緒に煮込むという、全国的にも珍しい製法が用いられているのです。この手間をかけた製法によって、だしとかえしの風味が一体となり、最後まで深みのある味わいを楽しめるのが魅力です。過去には火事により一時休業を余儀なくされた時期もありましたが、地元の方々の温かい支援もあり、同年中に再建を果たしました。これもまた、まさごそばが地域に根ざし、愛されていることの証しと言えます。

お店の献立は、創業当時から変わることなく、ただひたすらに中華そば一本で勝負されています。このシンプルさが、伝統の味を守り続ける強い意志を感じさせます。豚骨や香味野菜を丁寧に煮込んだスープに、カツオの風味豊かなだしを重ねた醤油味は、見た目の色の濃さからは想像がつかないほど、さっぱりとして優しい口当たりです。醤油の豊かなコクとだしの旨味が絶妙なバランスで調和し、何度食べても飽きがこない奥深い味わいを生み出しています。

麺はスープが良く絡むようにと工夫された、細めの平打ちちぢれ麺が使われています。この麺とスープの一体感こそが、高山ラーメンの醍醐味です。具材は、チャーシュー、メンマ、そして白ネギという非常にシンプルな構成です。派手さはありませんが、それゆえにスープと麺のおいしさが際立ちます。昔ながらの製法で作られたチャーシューは、脂っこさがなく、肉の旨味が凝縮されています。また、メンマのほどよい食感も良いアクセントになっています。この普遍的なおいしさは、「ミシュランガイド愛知・岐阜・三重2019 特別版」にも掲載されたことからも、広く認められていることがわかります。岐阜県の飛騨の小京都と呼ばれる古い町並みを散策される際には、ぜひこの伝統の中華そばを召し上がってみてください。歴史を感じるお店の雰囲気も相まって、きっと心に残る一杯になるでしょう。

【秘密のケンミンSHOW】高山ラーメンの総本山『まさごそば』お店は？岐阜高山ラーメンの魅力を徹底調査 2022/8/4放送でも紹介