神奈川県足柄下郡箱根町の自然豊かなエリアに佇む、本格的な手打ちそばを楽しめるお店です。こちらは、千葉県柏市に本店を構える蕎麦の名店「竹やぶ」の箱根店として、2003年にオープンいたしました。 創業者の阿部孝雄氏が、かつて名店として知られた「池之端藪蕎麦」で修業されたのち、自家製粉をいち早く取り入れた蕎麦の草分け的存在として知られています。箱根の店舗は、元々企業の保養所だった建物をリノベーションして作られました。

このお店の大きな魅力は、蕎麦の美味しさだけでなく、唯一無二の芸術的な空間です。 敷地内に一歩足を踏み入れると、まるで不思議なアート空間に迷い込んだような感覚になります。 先代の店主、阿部孝雄氏が手がけたこの空間は、割れた皿やビー玉を埋め込んだアプローチ、独創的なオブジェ、そして内装の意匠に至るまで、遊び心とこだわりが随所に感じられます。 このアバンギャルドな世界観は、フランスの「シュヴァルの理想宮」をモチーフにしたともいわれており、 お蕎麦屋さんとは思えないほどユニークな雰囲気を醸し出しています。また、開放感あふれるテラス席が人気を集めています。天気の良い日には、窓を開けて箱根の澄んだ空気や自然の香りを感じながら、ゆったりとお蕎麦を堪能できるのも、この場所ならではの格別な体験です。

蕎麦作りのこだわりも深く、お店の蕎麦には主に長野県の黒姫高原産のそば粉が使われています。 標高約700メートルという高地で、昼夜の寒暖差が激しい環境に耐え抜いた蕎麦は、しっかりと実が詰まり、香りや味に深みが生まれると言われています。 このそば粉を石臼で丁寧に手挽きすることで、香り豊かで喉越しの良い手打ちそばに仕上げています。

お店の看板メニューのひとつは、細めに仕上げられた十割そばのせいろそばです。 蕎麦本来の風味をしっかりと感じられる一品で、江戸そばの老舗で修行された流れを汲む、濃い目のつゆが特徴です。蕎麦の下の方だけを少しつけて食べるのが、粋な江戸っ子の楽しみ方だと伝えられています。 また、石臼で挽いたそば粉をそのまま使用した田舎せいろも人気があります。 こちらは数が限られているため、確実にお召し上がりになりたい場合は、お早めの時間にご来店ください。

蕎麦と並んで多くの方に愛されているのが、粗挽きそばがきです。 なんとコーヒーミルを使ってそば粉を粗挽きにするという、大変手間をかけた逸品で、そばの風味が際立っています。 シンプルにフランス産のゲランドの塩が添えられており、塩だけで味わうことで、さらに蕎麦の香りの奥深さを感じられるでしょう。 その他の品では、太白生しぼり胡麻油で揚げるというこだわりの天ぷらそばのかき揚げは、香ばしさが魅力です。 また、お酒のお供には、時間をかけてじっくりと炊き上げた旨みの濃い棒にしんや、そば粉と同じ産地のものを使用し緑色が特徴的なぜんまいなど、蕎麦屋らしい滋味深い一品料理も用意されています。 季節によっては、冬場には温かい鴨せいろ・南蛮などのメニューも登場し、訪れる時期によって異なる味を楽しむことができます。 蕎麦は毎日手打ちされており、なくなり次第閉店となりますので、お昼時の早い時間を目安に訪問するのがおすすめです。

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