Vetreria Venier srl
イタリアの水の都、ヴェネツィアに浮かぶムラーノ島にあるガラス工房が、Vetreria Venier srl(ヴェトレリア・ヴェニエル)です。
ムラーノ島は、古くからヴェネツィアングラスの伝統を守り続ける職人たちの島として世界的に知られており、その中でもこの工房は、三世代にわたる情熱と技術を受け継いでいることで有名です。創業者のエンツォ・ラッジア氏は1938年にヴェネツィアで生まれ、11歳の頃からガラス工芸の世界に足を踏み入れました。彼は見習いから始め、「ストリサオール」(炉に燃料を入れる人)や研磨師など、様々な役割を担いながら経験を積み重ね、ガラス工芸の深い知識と技術を身につけたのです。その技術と情熱は息子たちに引き継がれ、今では孫のニコラ・ラッジア氏とディミトリ・ピッコロ氏らが中心となり、創業から50年以上を経た現在も、その芸術的な遺産を大切に守り続けています。
この工房の大きな特徴は、単なる職人的な作業場から、国際的な企業へと発展したことです。特に、現在の経営に携わる新世代のメンバーは、国際ビジネスの知見も取り入れ、伝統的なガラス工芸に現代的な創造性、品質、そして職人技を融合させた、真のブランドを確立することを目指しています。その理念を体現するように、2023年には隣接する工房も取得し、展示スペースは2,500平方メートルを超えるムラーノ島で最大級の規模となりました。また、お客様へのおもてなしにも細やかな配慮があり、特別なゲスト向けには5隻の専用モータボートによる送迎サービスも用意しているそうで、ヴェネツィアの非日常的な体験をより一層特別なものにしてくれます。工房には島で最大級の炉が備えられており、最高1500度に達する熱で、あらゆる種類の高度なガラス加工を可能にしているところも、高い品質を支える要因です。
ここでは、伝統的な技法と現代的な感覚が融合した、非常に幅広い作品に出会うことができます。工房のギャラリーには、空間を華やかに彩るシャンデリアや、部屋のアクセントになる彫刻、そして普段使いにも美しい花瓶やグラスなど、様々なガラス製品が並んでいます。特に、伝統的な職人技を間近で見学できるガラス工芸のマスタークラス(Scuola del vetro)を催しているのも魅力です。これは、ムラーノ島のガラス文化の奥深さを知る貴重な機会になるでしょう。
ヴェトレリア・ヴェニエルの技術とセンスを感じられる作品として、ムラーノ島独自の技法が光るアイテムが人気を集めています。例えば、炉の傍らで職人たちが飲むのに使われたとされる、ぽってりとしたフォルムが愛らしいゴティ・デ・フォルナーサ(炉のグラス)があります。また、ガラスの内部に細かな気泡を意図的に閉じ込めたプーレゴーゾ・ガラスを使ったコレクションは、独特の質感と光の透過がとても幻想的で、根強いファンが多いそうです。そのほかにも、1960年代から1970年代のスタイルを取り入れたモダンなコレクションも展開しており、伝統的なムラーノ・グラスの概念を超えた、革新的なガラス芸術の世界に触れることができます。世界中の洗練された顧客の要望に応える特注のモザイク装飾も手掛けるなど、その技術力と対応力の高さは、ムラーノ島のガラス工芸の卓越性を示す存在といえるでしょう。
| 住所 | Fondamenta Andrea Navagero, 54/b, 30141 Venezia VE, イタリア |
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| 電話 | 041 736000 |
