イタリアの水の都ヴェネツィアにあるLa Bauta Restaurant（ラ・バウタ・レストラン）は、歴史ある5つ星ホテル「Nani Mocenigo Palace（ナーニ・モチェニーゴ宮殿）」の中に佇む、エレガントなビストロレストランでございます。店名に冠された「La Bauta」とは、ヴェネツィアのカーニバルで最も有名な伝統的な仮面の名前です。この仮面は、中世のヴェネツィアで身分を隠し、階級や性別に関係なく誰もが自由にお祭りや賭博に参加することを可能にした、自由と匿名性の象徴でした。そんなヴェネツィアの歴史と文化を大切にする精神を、美食を通じて表現しているのがこのレストランなのです。

このレストランの大きな特徴は、南イタリアでミシュラン二つ星を獲得している著名なシェフ、ジェンナーロ・エスポージト氏が監修を務めている点です。エグゼクティブシェフには、エスポージト氏のもとで修業を積み、さらにパリでアラン・デュカス氏らの指導も受けた若き才能、ラファエレ・イアセヴォリ氏が就任しています。イアセヴォリシェフは、フランスのエレガンスと地中海の伝統を融合させた感性を持ち、現代のイタリア料理を追求しています。メニューの根底にあるのは、郷土料理に対する深い敬意と情熱です。ヴェネツィアの古典的なレシピを出発点としながら、エスポージト氏の故郷であるカンパニア地方（ナポリなど）の本格的な味わいを随所に採り入れ、イタリア全土の豊かな食文化へのオマージュを表現した料理が魅力です。

店内は優雅で落ち着いた雰囲気があり、特に魅力的な冬の庭園や、古い井戸で飾られた美しい中庭でのお食事は、まるで時代を超えた特別な空間にいるような心地よさを感じさせてくれます。ここでは、伝統的なヴェネツィア料理と洗練されたモダンな要素が融合した、心躍る料理の数々に出会えます。

お店の名物の一つが、ヴェネツィアの居酒屋「バーカロ」で提供される小皿料理である「チケッティ」を洗練させたLa Bautaのチケッティです。この土地で古くから愛されてきた食文化を、より上質な形で体験できます。また、プリモ・ピアット（第一の皿）では、ヴェネツィアの食卓に欠かせない**イカ墨のリゾット**や、カンパニアの味覚を取り入れた**リコッタチーズとドライトマトのトルテッリ**などが人気を集めています。セコンド・ピアット（第二の皿）では、新鮮な魚介をさっくりと揚げた**ヴェネツィア風フリット・ディ・マーレ**は、この土地ならではの味わいとして訪れる人々に喜ばれています。締めくくりには、ペストリーシェフのラファエレ・サントロ氏がカンパニアのルーツを大切にしながら創り上げる、芸術作品のようなデザートが並びます。伝統的な**ティラミス**はもちろん、ダークチョコレートのセミフレッドやフルーツのババロアといった洗練されたドルチェで、美食の旅を締めくくることができます。ヴェネツィアの歴史と現代の食文化が交差するこの場所で、五感を満たすひとときをお過ごしになってはいかがでしょうか。