千葉県茂原市で、代々地元の人々に愛されてきた常泉製麩所は、その名の通り、お麩づくりを続ける老舗の専門店です。茂原駅からも比較的近い場所にあり、地域に根差したお店として長年親しまれています。100年以上の歴史を誇る老舗として、現在は三代目が暖簾を守り続けていると言われています。屋号からわかるように、麩の製造・販売を主としながら、お麩製品をはじめとする小麦製品全般を取り扱っており、その確かな技術と歴史の深さが、お店の穏やかな雰囲気から伝わってくるようです。常泉製麩所の店頭には、「茂原名物」として広く知られる和菓子、くず餅ののぼりが立ち、訪れる人々を温かく迎えてくれます。本来はお麩を製造・販売するお店でありながら、名物とされる和菓子が地域に深く定着していることも、このお店の面白さであり、大きな特徴かもしれません。

この常泉製麩所で、代々受け継がれてきた製法で作られているのが、地元で評判のくず餅です。一般的に、葛の澱粉を使い半透明でつるりとした食感を持つ関西地方のくず餅とは違い、このお店のくず餅は、小麦粉の澱粉を発酵させて作る、いわゆる関東風の製法で作られています。この製法によって生まれる独特の弾力と、もっちりとした柔らかな食感が大きな魅力です。添えられた黒蜜と香ばしいきな粉をたっぷりかけていただくくず餅は、素朴でありながらも、どこか懐かしさを感じる味わいで、幅広い世代のお客様を惹きつけています。店舗は茂原市の郵便局の近くにあり、散策の途中で気軽に立ち寄ることができる立地も、地域の人々に長く愛される理由の一つです。

また、常泉製麩所のもう一つの顔は、もちろんお麩の専門店としての側面です。看板商品のくず餅を目当てに訪れる方も多いですが、本業であるお麩製品を求めて遠方からやってくるお客様もいらっしゃいます。特に、お麩の中では、煮物などに使いやすい「車麩」が人気商品の一つです。製造直売ということもあり、品質が確かで、家庭で使いやすい価格とボリューム感で販売されています。ドーナツ状に焼き上げられた車麩は、調理前にたっぷりの水分を含ませてから煮込むと、だしをよく吸い込み、ふっくらと柔らかな食感になるのが特徴です。その優しい口当たりは、日々の食卓を豊かにしてくれると評判です。

さらに、お子様から大人まで楽しめる素朴なお菓子として、「ふ菓子」もこのお店の隠れた名物として挙げられます。軽くてサクサクとした食感と、懐かしい黒砂糖の甘さが魅力のふ菓子は、お茶請けにもぴったりです。常泉製麩所は、老舗ならではの丁寧な手仕事と、昔ながらの製法を守りながら、地域特産品としてくず餅を定着させた進取の精神が息づくお店と言えます。お麩の専門店として培われた小麦の扱いの技術が、くず餅やふ菓子といった様々な製品にも活かされ、豊かな食文化を支えているのです。茂原市の歴史と、職人の心意気を感じられる常泉製麩所の味を、ぜひ一度お試しください。くず餅は、その日に作られたものが店頭に並び、早い時間に売り切れてしまうこともあるので、早めの時間帯に訪れるのがおすすめです。