官庁街通り(駒街道)
青森県十和田市の中心部を南北に貫く官庁街通りは、市のシンボルロードとして市民に親しまれる美しい大通りです。親しみを込めて「駒街道」とも呼ばれるこの通りは、約1.1キロメートルの長さがあり、歩道と車道を合わせた幅が約36メートルというゆったりとしたスケールを持っています。通り沿いには十和田市役所をはじめ、国や県、市の官公庁が整然と立ち並ぶことからその名が付けられました。この街路が整備された背景には、十和田市がかつて馬産地として栄え、戦前には帝国陸軍の軍馬補充部が置かれていたという歴史的な経緯があります。戦後に軍馬補充部の広大な用地が開放された際、その主幹道路の跡地を活かして官公庁用地として計画的に整備され、碁盤の目のように区画された市街地の中でもひときわ端正な街並みが作られました。この優れた景観は、1986年(昭和61年)に旧建設省が選定した「日本の道・100選」に、また1992年(平成4年)には「新・日本百景」にも選ばれており、歴史と自然が調和した美しい道として知られています。
官庁街通りの最大の魅力は、街全体を一つの美術館に見立てる「Arts Towada」計画によって、通り全体が野外ギャラリーと化している点です。この取り組みは、かつて省庁再編などで生じた空き地を活かし、新しいまちづくりを目指したもので、その中核施設が十和田市現代美術館です。美術館の周辺や通り沿いの歩道には、国内外の著名なアーティストによる多様なアート作品が点在しています。作品の多くがガラス張りの開放的な構造を持つ美術館から街に向けて展示されているような配置になっており、訪れる人が日常の風景の中でアートを身近に感じ、楽しむことができるよう工夫されています。例えば、通りには馬をモチーフにした躍動感のあるオブジェや、エルヴィン・ヴルム氏のユーモラスな彫刻などがあり、散策しながらの作品鑑賞は特別な体験となるでしょう。
この通りには、樹齢100年を超える赤松と、見事なソメイヨシノの桜の木が4列の並木として植えられており、松の深い緑と桜の淡いピンクのコントラストが四季折々の美しい風景を織りなします。春には約150本の桜が一斉に咲き誇り、夜にはライトアップされた幻想的な夜桜が楽しめます。また、歩道の両側には、十和田市の観光名所である奥入瀬渓流や、開拓の歴史を持つ稲生川をイメージした水の流れが設けられており、散策する人々に潤いと涼やかさを与えています。かつての馬産地としての歴史を伝えるシンボルとして、さまざまな馬のオブジェが配置されていることも、この通りならではの特色です。
一年を通してさまざまな表情を見せる官庁街通りは、お祭りやイベントの舞台としても賑わいます。夏の時期には「十和田市夏まつり花火大会」が開催され、通りは歩行者天国となって屋台が並び、夜空を彩る花火とアート作品のライトアップが幻想的な夏の夜を演出します。秋には、郷土芸能の駒踊りや十和田囃子が鳴り響く「十和田市秋まつり」の山車や太鼓車が通りを練り歩き、地域の伝統を深く感じることができます。そして冬になると、十和田市現代美術館前のアート広場を中心に「アーツ・トワダ ウインターイルミネーション」が開催され、約25万球もの青いLEDが通りを包み込み、光のじゅうたんのような幻想的な光景が広がります。このように、官庁街通りはただの道路ではなく、歴史、アート、自然、そして文化イベントが融合し、訪れるたびに新しい発見がある十和田市の「感動創造都市」を体現する場所となっています。
| 住所 | 青森県十和田市 官庁街通り(駒街道) |
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ホームページ
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