湯河原の温泉街から少し足を延ばしたところにある「石窯パン工房」の名前を持つ、地域に根ざしたパン屋さんです。こちらの石窯パン工房 TAKUさんは、湯河原の町が「パンの町」として注目される中で、地元の人々はもちろん、観光で訪れた方にも愛されるお店として知られています。2012年4月にオープンしたお店で、店名は店長である高橋拓也さんの名前から付けられました。高橋店長は湯河原の出身で、神奈川県内の小田原や東京のベーカリーで15年もの間、パン作りの修業を重ねてきた方です。地元への想いから、「地元に親しまれる店を目指す」というコンセプトで、この湯河原の地で独立を果たしました。

お店の一番の特徴は、なんと言ってもパンを焼き上げるための石窯にあります。使用されている一枚岩の石窯は、中心と表面をほぼ同時に、最適なバランスで加熱できる設計になっています。この石窯で焼き上げることで、パンは外側がパリッと香ばしく、中はふんわりとしたやさしい食感に仕上がります。さらに、地元のつながりを大切にする店長の想いは、商品にもしっかりと表れています。例えば、人気の食パンには、湯河原の自然のイメージから「山」（角食パン）と「海」（山型食パン）という名前が付けられています。山の食パンには、地元のジャム店から仕入れた湯河原みかんなどの季節の柑橘類の皮が練り込まれていて、さわやかな香りが楽しめます。海の食パンは、塩気を意識し甘さを控えめにしたパン・ド・ミで、食事によく合うと好評です。また、地元愛は材料の仕入れにも活かされ、精肉店や豆腐店など、長年の友人が営む地域の店舗と独自のネットワークを築き、仕入れや共同での取り組みも行われています。地域の学校に通う中学生のお客様には全品10円引きという心温まるサービスも知られており、地元に愛されるお店でありたいという気持ちが伝わってきます。

石窯パン工房 TAKUさんを代表するご当地パンは、湯河原みかんの皮をブリオッシュ生地に練り込んだ「湯河原みかんあんパン」です。湯河原の特産品であるみかんが持つ、さわやかな香りが口の中に広がり、甘すぎない自然な味わいは、小さな子どもから年配の方まで幅広い世代に人気です。デニッシュ系も充実しており、100％フレッシュバターを贅沢に使ったデニッシュブレッドは、風味豊かでリッチな香りが魅力です。スイーツ感覚で楽しめるパンとしては、パリッとした皮としっとりとした中身の対比が楽しい「オレンジブリオッシュ ア・テート」や、地元で「ゆがわら」をテーマにしたパンとして親しまれる「ゆたんぽんパン」も見逃せません。他にも、あずき粒が浮き出たユニークな見た目を持つ「大納言」は、懐かしいあんぱんの風味とあずきの存在感が際立つ一品として、特に高齢の方に好評です。国産小麦を使ったフランスパンや、香ばしいラスクなど、バラエティ豊かなパンが並んでいます。季節ごとに地元のスイーツ店と連携した限定商品が出ることもありますので、お店を訪れるたびに新しい出会いがあるかもしれません。旅のおやつや朝食、お土産として、湯河原のやさしいパンをぜひ味わってみてください。