東京都練馬区にあります都立石神井公園は、三宝寺池と石神井池という二つの大きな池を中心とした、武蔵野の自然が色濃く残る広大な都立公園です。昭和34年3月11日に開園し、都心から電車でわずかな距離にもかかわらず、静けさと活気、そして歴史のロマンを感じられる都会のオアシスとして、地元の方々や多くの訪問者に親しまれています。園内は豊かな緑の雑木林や起伏に富んだ地形が特徴で、古くからこの地に息づく景観を今に伝えています。公園全体が環境や景観を保全するための風致地区に指定されていて、その美しい姿を守り続けているのです。

この公園を特徴づけているのは、歴史と自然が織りなすユニークな世界です。園内には、かつてこの地域一帯に勢力を持っていた豊島氏の居城であった石神井城跡があり、東京都の指定史跡になっています。城は室町時代の文明9年（1477年）に太田道灌に攻められ落城したと伝えられています。この落城にまつわる悲話として、豊島氏の姫であった照姫が三宝寺池に身を投げたという切ない照姫伝説が今も語り継がれています。この伝説を偲び、練馬区では毎年春に華やかな照姫まつりが開催され、多くの人で賑わいます。また、三宝寺池のエリアには、照姫とその父である豊島泰経にゆかりがあるとされる殿塚と姫塚といった二つの塚も残されており、歴史ファンにとって興味深い散策スポットとなっています。

園内の二つの池は、それぞれに違った魅力を持っています。木々に囲まれ、静寂な趣のある三宝寺池は、かつては善福寺池や井の頭池と並び武蔵野三大湧水池の一つに数えられていました。その湧水によって保たれる水辺の環境は大変貴重で、池のほとりにある三宝寺池沼沢植物群落は国の天然記念物に指定されているのです。貴重な湿地植物を観察できるこのエリアでは、四季折々の生命の営みに触れることができます。一方、賑やかな雰囲気の石神井池は、昭和初期に整備された人造の池で、ボート遊びを楽しめる行楽の場として人気があります。ここでは、手漕ぎのローボート、サイクルボート、そして可愛らしいスワンボートが用意されており、水上からのんびりと景色を眺めるのも、素敵な思い出になります。

ボート場に隣接する売店には、公園散策の休憩にぴったりの軽食が揃っています。特に人気なのは、かわいい顔の焼き印が押されたお団子東京やきもちです。くるみ味噌や醤油味などがあり、散策途中に一息入れるのにちょうど良いおやつになっています。公園は、春にはソメイヨシノやヤマザクラなど約240本の桜が満開になり、池の周りが華やかなお花見スポットになります。秋には三宝寺池を中心にカエデなどの木々が美しく色づき、紅葉の名所としても知られています。広大な敷地内には、野鳥の誘致林や水辺観察園なども設けられ、カワセミなどの野鳥や水生植物の観察も楽しめます。散策の際には、リードをつけたペットのふんは必ず持ち帰る、多くの方が集まる場所での喫煙は控えるなど、利用者の皆様が気持ちよく過ごせるよう、マナーを守って自然を大切に楽しんでください。