【広島】尾道「シネマ尾道」

シネマ尾道

JR尾道駅からすぐの場所に佇むシネマ尾道は、この街でたった一つの映画館として親しまれているミニシアターです。かつて小津安二郎監督や大林宣彦監督の作品の舞台となり「映画の街」として知られた尾道ですが、2001年(平成13年)に最後の映画館が閉館し、一度はその灯が途絶えてしまいました。しかし、地元の有志による草の根の活動と、市民から寄せられた2700万円もの募金によって、2008年(20年)10月、かつての映画館の建物を引き継ぐ形で再びこの地に映画の灯がともされました。

この映画館の建物は、もともと1947年(昭和22年)に演劇場として誕生し、後に尾道松竹として親しまれてきた歴史を持ちます。現在の鉄筋構造に建て替えられたのは1962年(昭和37年)のことで、館内にはどこか懐かしい昭和の面影が色濃く残っています。再建にあたっては、全国の閉館した映画館から譲り受けた座席や映写機が活用されており、多くの映画ファンの想いが詰まった「手作りの映画館」としての温かみが感じられます。支配人を務める河本清順さんは、自ら自転車で商店街を回り、上映スケジュールのチラシを一枚ずつ手渡して歩くなど、地域との絆を何よりも大切にされています。

こちらの映画館ならではの魅力は、作品選びの独自の視点と、映画人との距離の近さにあります。「冒頭の数分で観客を惹きつける力があるか」を基準に厳選された上映ラインナップは、新旧の洋画から邦画、ドキュメンタリーまで多岐にわたります。また、尾道が舞台となった名作東京物語などは、この地で観るからこその感動があると、今もなお大切に上映され続けています。時には監督や俳優が舞台挨拶に訪れ、上映後にロビーで観客と熱く語り合う光景も見られるなど、作り手と受け手が直接触れ合える貴重な交流の場となっています。

館内での楽しみを広げてくれるのが、こだわりのシアターフードやグッズです。映画のお供として人気の高いポップコーンは、香ばしい香りがロビーに広がり、鑑賞前の気分を高めてくれます。また、作品の世界観を深めてくれるパンフレットや、地元の方々の協力によって作られたオリジナルグッズなども手に取ることができます。ロビーには映画雑誌や過去のチラシが並び、待ち時間もゆったりと映画の余韻に浸れる工夫が施されています。

訪れる際の注意点として、全112席の1スクリーンのみの運営であるため、特に話題作やイベント時には早めに受付を済ませておくのがおすすめです。また、建物の維持管理はNPO法人の活動や市民の支援によって支えられており、館内を丁寧に利用することがこの大切な場所を守ることにも繋がります。映画の街に映画館を取り戻したいという、人々の純粋な願いから生まれたこの場所は、単なる上映施設を超えて、尾道の文化を守り続ける心の拠り所となっています。

住所 広島県尾道市東御所町6−2
電話 0848-24-8222

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カテゴリー: 広島県有吉弘行
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