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札幌・狸小路近くのビル地下で、魚の持ち味を独自の技で引き出す鮨を味わえる鮨ノ蔵です。店を切り盛りするのは井川大さん。華やかな店構えで目を引くのではなく、札幌市中央区南2条西4丁目の乙井ビル地下に構えた小さなカウンターで、つまみから握りまで一人で向き合っています。2015年には魚を熟成させて味を引き出す気鋭の鮨店として紹介され、2017年にはグルメメディアのレストラン企画でSILVERに選ばれるなど、早い時期から独自の魚仕事が注目されてきました。2026年には東京の会員制レストランで開かれた企画にも北海道の店として名を連ねています。
鮨ノ蔵らしさは、魚をただ新鮮な状態で握るのではなく、魚ごとに「いちばんおいしく感じられる状態」を探し続ける姿勢にあります。井川さんは若い頃から魚に関する論文を読み、熟成の進み方や水分の抜け方、包丁の入れ方、火を入れる温度などを研究してきました。さらに全国の漁場へ足を運び、その土地では食べられていても市場ではあまり評価されていない魚にも目を向けています。調理器具の選び方も型にはまらず、イカなどの細かな火入れには半田ごてを使うこともあります。一見すると意外な方法ですが、大学の研究機関で菌の発生率を調べ、保健所にも確認するなど、安全面まで検証してから料理に取り入れているというエピソードに、この店の探究心がよく表れています。
冬に訪れるなら、とくに知られているのがタチです。北海道で真鱈の白子を指す呼び名で、一般的なポン酢仕立てや天ぷらとは違い、井川さんは白子特有のにおいを抑えながら、甘みと滑らかな口溶けを引き出す方法を試行錯誤してきました。低温で丁寧に火を入れたタチは、出汁の旨みをまとわせながら、やわらかな食感へ仕上げています。さらに、パン粉と油と食材の関係から発想した冷たいタチのフライも、この店ならではのひと皿です。同じ真鱈の白子でも調理法を変えることで、温度や香り、舌触りの違いまで楽しませるところに、井川さんの料理の面白さが感じられます。
握りではイカの握りも印象的です。表面へ細やかに火を入れることで香ばしさを加え、イカの甘みと歯切れのよさを引き立てています。一般的な寿司道具だけに頼らず、食材に合う方法を探して道具そのものを選び直す発想も鮨ノ蔵の持ち味です。料理はおまかせコースを軸に組み立てられ、札幌の観光公式記事では季節の肴8〜9品ほどに、握り8〜10貫ほどを組み合わせる構成として紹介されています。魚の状態によって熟成や火入れを変えるため、同じ季節でもその日の仕入れから内容が組み立てられていきます。日本酒や白ワインなども合わせながら、握りだけでなく一連の魚料理として楽しみたい店です。
| 住所 | 北海道札幌市中央区南2条西4 乙井ビル B1F |
|---|---|
| 電話 | 080-3296-0202 |
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