愛媛県松山市北条の地で、大正10年（1921年）に創業された忽那釀造は、醤油や味噌を造り続けている老舗の醸造所です。温暖な気候と高縄山系のもたらす豊かな水の恵みを生かし、この地域の食文化を支える調味料を作り続けて百余年、令和3年（2021年）には創業100周年を迎えられました。当初は醤油と味噌の醸造を主に行っていましたが、昭和54年からは食酢やソース、昭和56年からはめんつゆや柚子ポン酢の製造も開始し、家庭の食卓に欠かせない「味の名脇役」として多くの人々に愛されています。

創業以来の長い歴史の中で、忽那釀造が大切にしているのは、昔ながらの変わらない味を守り続けるという姿勢です。それは、お客様にとっての「懐かしさを感じさせる味」や「想い出に繋がる味」を維持し続けることだと考え、その努力を惜しみません。味の要となる原材料には特にこだわり、厳選した素材だけを使っています。また、醤油や味噌を造る全工程を自社で100パーセント行う一貫した生産体制を現在も維持しており、これは醸造所としては近年では珍しい取り組みです。安心と安全を確保しながら、良質な調味料を提供し続けるために、長年培われた醸造技術を最大限に活かしています。

忽那釀造の技術とこだわりを体現する代表的な調味料の詰め合わせとして、平成元年に商標登録された「伊予路三昧」があります。これは、醤油や味噌だけでなく、ソース、めんつゆ、柚子ポン酢といった加工調味料まで製造する忽那釀造の幅広い商品力を結集させた、まさに伊予路の豊かな恵みを味わうことができるセットです。特に醤油は、地域には地域の味があるという考えのもと、愛媛の食生活に寄り添うように造られています。その味わいは、ただ塩辛いだけでなく、食材の良さを一層際立たせる深いコクと旨みがあり、一度使うと他の調味料では物足りなくなるという声も聞かれます。

数ある商品の中でも、まず試していただきたいのは、創業当時のままの杉樽を使って長期熟成させたという杉樽仕込醤油です。国内産の有機大豆と有機小麦が用いられており、長い時間をかけて樽の中でゆっくりと育まれた芳醇な香りとまろやかな旨みが特徴で、地域の食卓で重宝されています。また、人気の柚子ポン酢は、四国で収穫された柚子の果汁を贅沢に使い、濃口醤油と合わせて仕立てられています。醤油屋ならではの深いコクが、柚子の爽やかな風味を包み込み、水炊きや焼き魚などを上品な味わいへと引き立てます。さらに、愛媛の特産品として親しまれている、おかず味噌「しょうゆの実」に愛媛県産のちりめんを混ぜ込んだちりめんひしおも、隠れた人気を誇る一品です。ご飯のお供やお酒の肴にぴったりで、地域の味として親しまれてきました。これらの調味料は、毎日の献立を豊かに彩る、地域の宝のような存在なのです。