タイ東北部ウドーンターニー県に位置するプー・プラ・バート歴史公園は、その息をのむような奇岩群と、数千年の時を超えて語りかける先史時代の壁画が織りなす、まさに地球の神秘と人類の歴史が交錯する場所です。
2024年7月27日、この地は「ドヴァーラヴァティー時代のシーマ石の伝統の証拠としてのプー・プラ・バート」として、タイで8番目のユネスコ世界文化遺産に登録されました。

プー・プラ・バート歴史公園の最大の魅力は、氷河や風雨による浸食によって形成された、まるでキノコのような、あるいは絶妙なバランスでそびえ立つ巨大な砂岩の奇岩群です。
これらの奇岩は単なる自然の彫刻に留まらず、かつては先史時代の人々の住居として、そして7世紀以降のドヴァーラヴァティー時代には仏教の祭事場として利用されてきました。
特に注目すべきは、仏教の聖域を示す境界石である「シーマ石」が、世界で最も多く原位置のまま保存されている点です。
これらのシーマ石は、当時の仏教徒たちが聖なる空間をどのように定め、信仰を育んできたかを雄弁に物語っています。
公園内には、ラオスの首都ビエンチャンの起源にまつわる美しい姫ウサの伝承に由来する「ウサの塔」と呼ばれる奇岩もあり、ロマンあふれる物語が古代の風景に彩りを添えています。
赤い顔料で描かれた先史時代の岩絵には、人間や動物、幾何学模様が刻まれ、約2,500年～3,000年前の狩猟採集民の生活や儀式の痕跡を今に伝えています。
これらの岩絵は、単なる絵画ではなく、当時の人々の世界観や精神性を垣間見せてくれる貴重な証拠と言えるでしょう。
プー・プラ・バート歴史公園は、自然の力と人間の営みが作り出した壮大な文化景観であり、訪れる全ての人にとって深い学びと感動をもたらす特別な場所なのです。