近代的な建物に囲まれひっそりと佇むその姿は、まるで時が止まったかのような趣を醸し出しています。
1931年（昭和6年）に創業したこのお店は、約94年もの長きにわたり、美味しくて手頃な価格の天ぷらを提供し続けてきました。
初代店主である青木寅吉氏が屋台から始めたという「大衆に美味い天ぷらを」という志は、現在も変わることなく受け継がれています。

「はちまき」の最大の魅力は、その歴史と、多くの文豪に愛されたという逸話、そして何よりもその確かな美味しさにあります。
店内には、江戸川乱歩や井伏鱒二といった日本を代表する文豪たちの写真や直筆サインが飾られており、彼らがこの場所で舌鼓を打ち、文学談義に花を咲かせたであろう情景を想像するだけで、なんとも言えないロマンを感じさせます。
かつては、お店の2階で「二七会」と呼ばれる作家たちの会合が開かれ、江戸川乱歩を中心に創作論が交わされていたという歴史は、この店が単なる天ぷら屋以上の、文化的な交流の場であったことを物語っています。

「穴子海老天丼」は、丼からはみ出すほどの大きな穴子と、プリプリの海老が2本乗った、まさに看板メニュー。
ごま油の香ばしい香りが食欲をそそり、サクッと軽い衣とふっくらとした穴子の身のコントラストは感動的です。
天つゆはもちろん、塩でシンプルに味わうのもおすすめです。また、ご飯は大盛りにすれば天丼のタレをかけて、二度美味しい食べ方も楽しめます。