寛政元年（1789年）創業という230年以上の歴史を誇る老舗蕎麦店です。この地で代々受け継がれてきた伝統の味は、まさに江戸の食文化を今に伝える貴重な存在と言えるでしょう。
蕎麦の実の最も芯の部分のみを使用し、丁寧に挽き上げられた真白い蕎麦粉で打たれる更科そばは、透き通るような白さと、絹のような滑らかな舌触り、そしてほのかな甘みが特徴です。
一般的な蕎麦とは一線を画すその上品な風味は、古くは江戸城や大名屋敷、さらには宮家にも献上されたという輝かしい歴史が物語っています。
まさに「御膳蕎麦」として、時の権力者たちをも魅了してきた逸品です。

また、季節ごとに異なる「変わりそば」も、この店を訪れる楽しみの一つです。
紅花や柚子、よもぎなど、旬の素材を練り込んだ色鮮やかな蕎麦は、目にも美しく、四季折々の香りと味わいを堪能できます。
職人の遊び心と熟練の技が光る変わりそばは、真っ白な更科そばだからこそ際立つ素材の風味を最大限に引き出しています。
そして、蕎麦の風味を一層引き立てるのが、創業以来変わらない伝統の「そばつゆ」です。
すっきりとした辛口でありながらも奥深い出汁の旨みが特徴で、更科そばの繊細な味わいを損なうことなく、完璧な調和を生み出しています。