単なる古民家カフェの枠を超え、地域と人々が繋がり、新たな文化が息づく特別な場所です。正面には雄大な大山、そして少し足を延ばせば日本海を望むこの地で、「まぶや」は訪れる人々に心安らぐ時間と、温かい交流の機会を提供しています。

この魅力的な空間の主役である建物は、かつて地域医療を支えた「馬淵邸」という由緒ある古民家です。昭和3年（1928年または1929年）に建てられたこの邸宅は、代々医者の家系が医院を開業し、1994年まで地域の人々の健康を見守ってきました。約20年間の空き家期間を経て、2013年10月に地域の若手起業家やUIJターン者で構成される任意団体「築き会」の手により、新たな命を吹き込まれ「まぶや」として再生しました。その後、2014年4月からは、地元大山町逢坂地区のまちづくり団体「やらいや逢坂」が運営に加わり、地域に根ざした活動拠点としての役割を一層強固なものにしています。「まぶや」という名称には、「美しい（まぶい）」「本物（まぶ）」、そして「馬淵邸（まぶち）」という三つの意味が込められており、この場所が持つ本質的な魅力と歴史への敬意が表されています。

「まぶや」の建築は、昭和初期の先進的な和洋折衷様式を見事に体現しており、当時の匠の技が随所に光ります。医院として使われていた土間は待合室として、広間は診察室や入院部屋として利用されており、当時の面影を色濃く残しています。座敷の構えや軒高の高さなど、細部にまでこだわりが見られる設計は、建築物としても大きな価値を持っています。中庭から差し込む柔らかな陽光が、歴史を刻んだ木材の温かみを一層引き立て、訪れる人々を優しく包み込みます。ここでは、ただカフェとして利用するだけでなく、地域のイベントスペースやギャラリー、時には宿泊場所としても活用され、「地域」と「ひと」を繋ぐコミュニティの拠点として、多岐にわたる活動が展開されています。特に、アート・イン・レジデンスのプロジェクトや、子どもたちのための冒険遊び場「きち基地」の運営、地域住民による「まぶカフェ一日店長の日」など、様々な「やりたい」が形になる場所として、多くの人々が集い、笑顔と活気に満ちています。