正福寺 地蔵堂
都内に現存する唯一の国宝木造建造物であり、室町時代に建立された禅宗様(ぜんしゅうよう)仏殿の代表的遺構として非常に価値の高い歴史的建造物です。
特に、その堂内に奉納された約1000体(かつては1300余体とも)もの小さな木造地蔵菩薩像から「千体地蔵堂」として地元で親しまれており、静かな武蔵野の地に佇むその姿は、訪れる人々に静謐で奥ゆかしい感動を与えてくれます。
この地蔵堂は、臨済宗建長寺派の寺院である金剛山正福寺の境内にあり、地元では堂内に納められたおびただしい数の小地蔵から「千体地蔵堂」と呼ばれ、深く信仰を集めてきました。
創建については諸説ありますが、寺伝によれば、鎌倉幕府の執権である北条時宗がこの地で病に倒れた際、夢枕に現れた地蔵菩薩から授かった丸薬で病が完治したことに感謝し、地蔵堂を中心とする七堂伽藍を建立したのが始まりと伝えられています。
しかし、地蔵堂自体の正確な建立年は長らく不明でしたが、昭和9年(1934年)の改修時に発見された墨書銘によって、室町時代の応永14年(1407年)に建てられたことが判明しました。
この年代確定により、地蔵堂は約600年以上の時を超えて現存する、極めて貴重な歴史的遺構であることが証明されました。
正福寺は鎌倉の建長寺の末寺にあたります。
鎌倉時代に中国の宋から禅宗とともに伝わった「禅宗様」の建築様式が、武家社会に広く受け入れられ、この地蔵堂にもその影響が強く表れています。
地蔵像は、像高15cm~30cm程度の一木削り(いちぼくづくり)の丸彫りで、それぞれが微妙に異なる形状を持っています。
これらが集まった経緯には、当時の庶民の篤い信仰心が関係しています。
人々は願い事があるとき、地蔵堂の地蔵像を一体借りて持ち帰り、願いが叶うと、借りた像に加えて新しい像をもう一体添えて奉納するという慣習があったと伝えられています。
この慣習によって、地蔵像の数が少しずつ増えていき、千体近くに達したと考えられています。
このエピソードは、地蔵堂が単なる建築物としてだけでなく、地域の人々の生活や信仰に深く根ざした存在であったことを示しています。
| 住所 | 〒189-0022 東京都東村山市野口町4丁目6−1 |
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| TEL | 042-391-0460 |
