東急田園都市線梶が谷駅から歩いて7分ほどの場所にある「とんかつ華家」は、地元の方々に長年愛され続けている、街の定食屋さんの雰囲気を大切にしているお店です。もともとは店主である天谷信元さんのご両親が営まれていた精肉店を引き継ぐ形で、1989年に南武線の中野島駅前で開店しました。その後、1994年に現在の梶が谷の地に移り、この場所で地域に根ざしたお店として親しまれています。ベッドタウンという土地柄から、開店当初から近隣の住民の方が主な客層でしたが、あるロックバンドの「聖地」として知られるようになり、今では全国からファンが訪れる人気店となっています。

そのきっかけを作ったのは、川崎市出身のガールズバンドSHISHAMOです。メンバーが通っていた高校の軽音楽部顧問の先生が、当時「柳葉魚（ししゃも）」というバンド名だった彼女たちのデモCDを、常連だった店主の天谷さんのもとへ持ってきたことが縁の始まりでした。店内で流れていた音源を聴いた事務所のマネージャーが翌日には学校へ足を運んだというエピソードは、まさにSHISHAMOがデビューのきっかけをつかんだ場所として、ファンの間で語り継がれています。音楽を愛する天谷さんは、それ以降、デビューが決まった2012年の初来店を含め、メンバーやファンとの交流を深めてきました。店内に一歩足を踏み入れると、壁一面に飾られたSHISHAMOのポスターやサイン、そしてメンバーのシグニチャーモデルのギターなどが目に飛び込み、その熱い想いが伝わってきます。来店した誰もが手に取って見られるように、天谷さんが手作りしたスクラップブックには、お店とSHISHAMOの歴史がぎっしり詰まっており、ファンにとって宝物のような空間となっています。

看板メニューは、ボリューム満点と評判のロースとんかつ定食です。素材にこだわった豚肉は肉厚ながらもとても柔らかく、さっぱりとした油で揚げられた衣は軽い食感のサクサク感に仕上がっています。とんかつは油のしつこさを感じさせず、夏でも美味しく食べられると好評です。お米も大盛りでしっかり提供され、具だくさんの味噌汁やきんぴらごぼう、お漬物といった脇役も充実しており、お腹も心も満たしてくれる定食です。

また、ファンの間では、デビュー当時のメンバーが好んで食べていたというチーズカツも人気を集めています。たっぷりのチーズを豚肉で包み込んだ一品で、とろけるチーズととんかつの相性の良さが堪能できるメニューです。さらに、定番のヒレカツ定食も、サッと食べられると多忙になったメンバーが好んで注文していたと言われています。この他にも、梅じそチキンかつや、梅と納豆が組み合わされた梅納豆かつ、ネギ巻きやしそ巻きなどのバリエーションが楽しい和風かつといった、変わり種のメニューが豊富に揃っており、何度訪れても新しい味に出会える楽しさがあります。家族経営ならではのアットホームな雰囲気の中で、こだわりのとんかつを心ゆくまで味わうことができる「とんかつ華家」は、地元の方だけでなく、遠方から訪れる音楽ファンにも愛される特別な場所となっています。