練馬区上石神井の住宅街で、代々受け継がれてきた農業と新しい技術を融合させた「ハイブリッドな農業」に取り組む都市型農園です。この農園は、上石神井の古い地名である「観音山」からその名を付けたそうです。東京都が推進する環境に優しい農業を行う「東京都エコファーマー」の認証も受けており、安心で安全な野菜作りを目指しています。新鮮な旬の野菜を求め、地元の方々はもちろん、区外からも多くの人が訪れる人気の直売所でもあります。

ベジファームかのんの大きな特徴は、年間およそ40種類もの野菜を育てる「少量多品目栽培」を行っている点です。一つの野菜に絞るのではなく、季節の移り変わりを感じられる多様な野菜を丁寧に作っています。特に土づくりには深いこだわりがあり、祖父の代から稲ワラを入れて土を耕し、ふかふかに保つ伝統的な手法を大切にしています。一方で、コンピューターで温度や肥料を徹底管理する養液栽培を導入し、特に糖度の高いトマトを育てるなど、最新技術も積極的に取り入れています。このように伝統と革新を両立させているのが、都会の農業をリードするベジファームかのんの魅力です。また、農園の一角には、冷蔵機能が付いたコインロッカー式の野菜自動販売機が設置されていて、お札でお釣りも出る便利な仕組みになっています。畑で採れたばかりの新鮮な野菜を、その日のうちに気軽に手に入れられる工夫がされていて、地域の食卓を支えています。

こちらの農園では、お子さんや土に触れる機会の少ない方々に向けた収穫体験イベントを積極的に開催しており、食育にも熱心に取り組んでいます。子どもたちが自分の手で野菜を掘り出し、「美味しい」と感じる体験を通じて、農業の大切さや食べ物のありがたさを伝える場にもなっています。栽培している野菜の中でも特に力を入れているのがさつまいもで、収穫後に一定の温度と湿度で貯蔵する「キュアリング処理」を施し、さらに寝かせて熟成させた熟成芋プレミアムを販売しています。このひと手間を加えることで、さつまいも本来の甘さが引き出されるそうです。ねっとりとした食感が人気の紅はるかと、なめらかな口あたりが特徴のシルクスイートという2種類のさつまいもが主軸になっています。

農園で採れた野菜は、そのまま直売されるだけでなく、様々な形で地域の「美味しい」を彩っています。地産地消を目指し、練馬区内の和菓子店やパン店、洋菓子店などと協力して、農園の素材を使った加工品やコラボレーション商品も生み出されています。例えば、和菓子屋さんの「あわ家惣兵衛」ではシルクスイートをたっぷりと使った和風スイートポテトの芋づつみが、また別の和菓子屋さんの「大吾」では同じくシルクスイートのさつまいも羊羹が販売されています。さらに、洋菓子店の「パティスリープラネッツ」では、農園自慢の熟成芋プレミアム シルクスイートを使った熟成さつまいもタルトが登場するなど、農園の美味しいさつまいもを活かした多彩なスイーツが地元で愛されています。これらの加工品を通して、遠方の方にも練馬の味を届けるため、オンラインでの販売も積極的に行っています。地元の食文化を豊かにする、畑と食卓をつなぐ取り組みが素晴らしいですね。