深大寺の深い緑に包まれた静かな場所にある、風情豊かなお蕎麦屋さんです。玉乃屋は、都内でも古い歴史を持つ深大寺の、参道から少し奥まった神代植物公園の深大寺門近くに佇んでいます。杉皮と竹をあしらった趣深い屋根が目印で、まるで江戸時代の街道沿いの茶屋のような、落ち着いた雰囲気を醸し出しています。深大寺の周辺は、米の生産にあまり向かない土地柄だったため、江戸時代には代わりに蕎麦が作られ、お寺に献上されていました。それが、お寺が来客をもてなす際に蕎麦を振る舞ったことが始まりとされる「深大寺そば」のルーツと言われています。徳川家光公が鷹狩りの際に立ち寄り、この地の蕎麦を褒めたという記録も残されていて、古くから名物として愛されてきた歴史があります。玉乃屋さんは、その伝統的な深大寺そばの味を今に伝える人気のお店の一つです。

お店の一番の特徴は、そば粉を挽くところからこだわり抜いた、手打ちの十割そばを提供していることです。十割そばと言えば、つなぎを使わない分、切れやすくなりがちですが、こちらでは国産そば粉を100%使い、水とそば粉だけでしっかりとしたコシと喉ごしを兼ね備えた蕎麦に仕上げています。この上質なそば粉を実現するため、北海道や茨城の提携農家さんに、蕎麦の実が黒くなる前の若い状態で収穫する「早狩り」をお願いし、仕入れた「抜き実」を店内の石臼で丁寧に自家製粉しています。農家さんが丹精込めて育てた蕎麦を、一番おいしい状態で食べていただきたいという、ご主人の熱い思いが詰まった逸品です。また、お店の周りの豊かな森の自然も魅力の一つです。天気の良い日には開放的な外席が用意されていて、涼しい木陰で深大寺の鐘の音を聞きながら、心地よい風を感じてお蕎麦をいただく時間は格別です。外席はペットと一緒にお食事を楽しめるのもうれしい点です。

玉乃屋さんの十割そばは、「細打ちせいろ」と「太打ち田舎」の二種類から麺を選べるのも珍しいポイントです。人気の高い太打ち田舎は、その名の通り、きしめんを思わせるほど太く打たれた麺で、強いコシと噛み応えがあり、口に入れた瞬間に蕎麦の香りがふわっと広がる、食べ応えのある一品です。蕎麦本来の風味をしっかりと感じたい方におすすめです。一方、細打ちせいろは、喉ごしの良さを追求して作られていて、ツルリとした食感と繊細な味わいが楽しめます。つゆにもこだわりがあり、昆布をベースに、亀節と宗田節を加えることで、蕎麦の風味を邪魔しない、まろやかでコクのある出汁に仕上げています。

お蕎麦と合わせて楽しみたいのが、深大寺周辺の豊かな水で造られた地ビール、深大寺ビールです。すっきりとした口当たりが特徴で、お蕎麦を待つ間や、食後にゆっくりと過ごすひとときにぴったりです。また、デザートやお土産に好評なのが、可愛らしいそばまんじゅうです。生地がもっちりとしていて、中には粒あんがたっぷり入っています。お蕎麦だけでなく、天ぷらを一緒に楽しめる天せいろも人気で、四季折々の野菜の天ぷらを添えていただくのも贅沢な味わいです。深大寺や神代植物公園を訪れた際には、ぜひ森の中で静かに佇む玉乃屋さんで、こだわりの深大寺そばを召し上がってみてください。