東京都調布市にある松葉茶屋は、緑豊かな深大寺のほとりで、伝統的な深大寺そばの味わいを守り続ける手打ちそばのお店です。都心からほど近い場所にありながら、豊かな自然に囲まれた静かな佇まいで、訪れる人々に安らぎの時間を提供しています。初代である祖母様が、戦後この深大寺の地に移り住み、寺の好意でリヤカーでの売店から商いを始めたのがお店の始まりです。当時はアイスキャンディーやお菓子などを扱っていましたが、次第に生そばを提供するようになり、現在の松葉茶屋の前身となりました。その後、三代目となるご主人が独学でそば打ちを学び、手間暇かけた手打ちそばを出すお店へと切り替えた歴史を持ち、今は四代目も経営に加わるなど、世代を超えて深大寺のそば文化を伝える役割を担っています。

このお店の大きな特徴の一つは、そばへの深いこだわりと、都会の喧騒を忘れさせるような空間です。そば粉は、香りや味、色を大切にし、その時々で最も品質の良い産地を厳選して仕入れ、季節や天候に合わせてそば粉の挽き方や加水量を繊細に調整しています。毎日、職人が真心を込めて打つそばは、喉越しがなめらかで味わい深く、口に広がるそば本来の力強さを感じさせてくれます。また、客席は屋内と屋外に用意されており、特に屋内には樹齢推定200年を超えるコナラの古木が店内にそのまま残されていて、ご神木として店の歴史とともにあります。屋外席には焚き火場も設けられていて、季節の移ろいを感じながら、炎を眺めてそば前やおそばを楽しめるという、趣深い演出もこのお店ならではの魅力と言えます。松葉茶屋は、深大寺そば組合の取り組みとして、地元の子供たちに「そば学習」やそば打ちを教える活動にも力を入れており、地域のそば文化を次世代へと引き継いでいくことにも情熱を注いでいます。

数あるメニューの中でも特に人気を集めているのは、天ざるです。二八そばに、五種類の揚げたて天ぷらが添えられた贅沢な一品で、サクサクの衣をまとった天ぷらと、風味豊かなそばの組み合わせは、多くのお客様から愛されています。また、そば本来の風味を心ゆくまで味わいたい方には、厳選された国内産のそば粉を使い、江戸石臼で挽いた十割そばを使った十割天せいろもおすすめです。こちらも揚げたての天ぷら五種がセットになっていて、こだわりのそばを堪能できる逸品です。

さらに、このお店の名物として知られているのが、辛味大根そばと鴨せいろです。辛味大根そばには、会津の伝統野菜である香辛庵大根（アサギ大根）が使われており、ツーンとした独特の辛味と旨味が、甘さ控えめでバランスの良いそばつゆと絶妙に調和して、シンプルな中にも奥深い味わいを醸し出しています。また、温かいおそばなら、深大寺産のゆずが香る鴨せいろも心も体も温まる一品として人気です。そのほか、そばの伝統を活かしたサイドメニューとして、芳醇な香りのそばがきや、そば粉100%とは思えない食感と風味が記憶に残るそばあげもちといった品々も用意されており、そば好きの方から初めて深大寺そばを召し上がる方まで、幅広い方におすすめできるお店です。豊かな自然に囲まれた中で、職人の技とこだわりが詰まった深大寺そばを、心ゆくまでゆっくりとお楽しみください。