鳳明館
東京は文京区本郷という、かつて夏目漱石や森鷗外といった文豪たちが愛した歴史深いエリアに、純日本旅館の鳳明館は静かに佇んでいます。鳳明館は明治31年(1898年)に下宿として創業し、その後、時代の流れとともに旅館へと姿を変えてきました。築120年を超える本館は、国の登録有形文化財にも指定されていて、東京のまちに残る貴重な近代和風建築として知られています。この本館をはじめ、昭和の時代に建てられた台町別館、森川別館の三館から構成されており、それぞれが異なる時代の建築様式や空気感を今に伝えているところが大変魅力的です。
この鳳明館の大きな特徴は、その建物の歴史的な重みと、細部にまで施された職人の技、そして遊び心にあります。建物の維持には大変な苦労があったそうですが、関東大震災や東京大空襲の戦禍をもくぐり抜け、本郷のまちの記憶を留めてきた貴重な存在です。創業者は「普請道楽」とも呼ばれるほど建物へのこだわりが強く、誰にも気づかれないような小さな部分にも、職人さんに依頼して粋な仕掛けを施したと言われています。そのため、一歩足を踏み入れると、まるで時間が止まったかのようなレトロな空間が広がり、訪れる人に懐かしさとともに新鮮な感動を与えてくれます。現在、鳳明館は建物の維持活用のため改修工事を予定しており、宿泊の受け入れは限定的な状況ではありますが、その文化的な価値を未来に残そうと努力が続けられています。
鳳明館のもう一つの大きな魅力は、客室が一つとして同じ造りになっていない点です。数寄屋造りの意匠を取り入れた客室は、それぞれ異なる木材を使い、部屋ごとに趣向が凝らされていて、訪れるたびに新鮮な驚きがあります。特に本館では、床柱などに使われている銘木にちなんだ部屋名が付けられているお部屋が多くあり、その名前の由来をたどるのも楽しいものです。館のシンボルである鳳凰のモチーフは、玄関のお帳場など館内の至る所に見つけることができ、探してみるのも素敵な体験となるでしょう。団体旅行の黄金期には、全国から集まる修学旅行生で賑わい、最大で約1200名もの学生を収容したという記録が、この建物の持つスケール感と歴史を物語っています。
数ある客室の中でも、職人の技と遊び心が特に光っているのが、さまざまな意匠を凝らしたお部屋です。例えば、縁起のよいもの尽くしとなっている「ゑびすの間」では、天井が末広がりの傘の形を模していたり、床柱には登り龍を思わせるザクロの木が使われていたりします。また、打出の小槌の形をした窓には、七福神の恵比寿さまの姿が組子細工で描かれていて、思わず笑みがこぼれてしまいます。さらに、丸い障子窓が特徴的な「末広の間」は、松竹梅の木材が巧みに使われており、細やかな配慮を感じられます。立派な床の間が印象的な「朝日の間」には、力強いケヤキの床柱が立ち、天井の中央部がゆるやかな弧を描くなど、手の込んだ構成が見られ、当時の職人さんの心意気が伝わってきます。これらの意匠は、当時の建主が市場で気に入った木材を見つけては、大工さんと相談しながらデザインを決めていったというエピソードの通り、木の特徴を最大限に生かした唯一無二の空間を作り出しているのです。
| 住所 | 東京都文京区本郷5丁目10−5 鳳明館本館 |
|---|---|
| 電話 | 03-3811-1181 |
ホームページ
東京は文京区本郷にある旅館『鳳明館(HOMEIKAN)』です。
HOMEIKAN is a ryokan located in a town with a history of Tokyo. …
