御徒町駅から歩いてすぐの、宝石店が立ち並ぶ界隈の地下に店を構える、100%完全菜食の本格インド料理店がヴェジハーブサーガです。2009年にオープンして以来、インド料理好きの間ではベジタリアンの聖地として知られています。創業のきっかけは、インド人であるオーナーが、自身と家族が心から満足できる美味しい菜食料理を、いつでも食べられるようにしたいという強い思いからでした。オーナーは宝石商を営むかたわら、食に対して妥協しないこだわりを持ち、インドから一流のシェフを招き入れました。そのため、日本人の好みに合わせることなく、本場そのままの力強い味わいを追求しています。

このお店の最大のこだわりは、すべてのメニューで動物性食材を一切使わない、完全菜食主義を貫いている点です。肉や魚、卵は使わないのはもちろん、店内はアルコール厳禁、完全禁煙という徹底ぶりです。この厳格さは、オーナーがインドの古い宗教であるジャイナ教の信徒であることに由来します。ジャイナ教は「アヒンサー」、つまり生き物を傷つけないことを厳守する教えで、一部の厳格な信者の方は土の中で育つジャガイモなどの球根類も、植物の生命を絶つことにつながるという理由から口にしないほどです。ヴェジハーブサーガでは、乳製品（ギーやヨーグルト）を使用するベジタリアン向けの料理と、それらも使わないヴィーガン対応の料理が豊富に揃っており、食の制限がある方々にも大変ありがたい存在です。お店には、近隣で働くインド系のお客様や、日本の菜食料理を求めて訪れる欧米からの観光客も多く、一歩足を踏み入れると、まるでインドの賑やかな食堂にいるような異国情緒を味わえるのも、大きな魅力になっています。オーナーは占星術師でもあるというユニークな一面を持ち、陽気なスタッフの笑顔とともに、訪れる人々を温かく迎えてくれます。

このお店の名物として、まず南インドの定食である南インドミールスが挙げられます。こちらは、数種類のカレーや、スープのように飲むラッサム、豆と野菜の煮込みスープサンバル、米や豆を発酵させたドーナッツのようなワダなどが盆に並べられ、これらを少しずつ混ぜ合わせながら、複雑な味わいの変化を楽しむのが醍醐味です。また、グジャラティ・タリーやラジャスタニ・タリーなど、インドの地方に特化したセットメニューもあり、それぞれの地域の食文化を感じることができます。熱狂的なファンを持つ人気メニューに、ビリヤニがあります。パラパラとした食感のバスマティライスを使い、野菜と厳選されたスパイスだけで、肉が入っていなくても驚くほど芳醇で奥行きのある香りと味を実現しています。こちらは、フレッシュなものを提供したいというお店のこだわりから、ランチでは火曜日と金曜日限定で提供されており、その日を狙って訪れるお客様も少なくありません。

もう一つ、ぜひ試していただきたいのがマサラ・ドーサです。薄く焼かれた米粉のクレープのような生地は、パリッとしていながらもっちりとした食感があり、お皿からはみ出るほどの大きさです。中央には、スパイスで炒めたポテトマサラが包まれており、添えられたサンバルや、ココナッツやトマトベースのチャトニをつけながらいただきます。また、サイドメニューでは、じゃがいもとヨーグルト、タマリンドソースを組み合わせたアル・パプリ・チャートも、オーナーがおすすめする一品です。カレーの種類も豊富で、ひよこ豆やレンズ豆を濃厚に煮込んだパンジャービー・ダルや、タマネギの甘みとナスのとろける食感が絶妙なベイガントマトなど、スパイス使いの妙によって、野菜が持つ本来の旨味が最大限に引き出されています。食後には、スパイスの香るマサラチャイをゆっくりと味わい、心身ともにリフレッシュしてみてはいかがでしょうか。