【千葉】成田「い志ばし」

千葉県成田市、成田湯川駅から車で少し足を延ばした、印旛沼（いんばぬま）に近い船形（ふなかた）エリアに、地元の方はもちろん、遠方からもお客様が訪れるうなぎ料理の専門店、い志ばしがございます。この一帯は、かつて天然うなぎが豊富に獲れた印旛沼に近く、特に国道464号線、通称「宗吾（そうご）街道」沿いにはうなぎのお店が点在し、「宗吾うなぎ街道」としても知られています。い志ばしは、街道沿いにありながら、飾らない昔ながらの食堂のような親しみやすい店構えが特徴です。週末のお昼時には、開店前から多くのお客様が訪れ、その外観からは想像できないほどの活気に包まれます。現在もお昼の時間帯のみの営業で、長年この地で愛されてきた名店の風格を感じさせます。

このお店の最大の特徴は、一般的な関東風のうなぎとは異なる独特の調理法にあります。関東では、鰻を割いて白焼きにした後、一度蒸してからタレをつけて焼き上げる「蒸し」の工程を経ることで、身をふっくらと仕上げるのが主流ですが、い志ばしでは、この「蒸し」を行わずに、割きたての鰻をそのまま炭火などで焼き上げる「地焼き（直焼き）」の技法を用いているのです。これにより、皮目はパリッと香ばしく、身は歯ごたえがありながらもふっくらとした絶妙な食感を生み出しています。この力強く焼き上げられた鰻の香ばしさが、甘さ控えめの秘伝のタレと相まって、江戸前風の柔らかさに慣れた方には新鮮な驚きと感動を与えてくれます。

メニューは潔いほどシンプルで、お店のこだわりが詰まったうなぎ料理を楽しめます。お重で提供される定番のうな重は、鰻の旨味と香ばしさを存分に堪能できる逸品です。また、うなぎ本来の味をシンプルに味わいたい方には、さっぱりとした白焼定食も大変人気があります。こちらは、焼き加減の良さが際立ち、わさび醤油などでいただくと、鰻の繊細な風味と香ばしい皮の食感がより一層引き立ちます。さらに、一品料理として提供される肝焼きも、来店客の多くが注文する人気のメニューです。混雑時には売り切れてしまうこともあるほどの人気ぶりで、香ばしく焼き上げられた肝を肴に、鰻の焼き上がりを待つのも粋な楽しみ方と言えるでしょう。

お店は席数が限られていることもあり、混雑を避けるためにお店の方に声をかけて番号札を受け取り、注文を済ませてから待つというシステムをとっています。待っている間に注文が済んでいるため、席に着くと比較的早くお料理が運ばれてくるのも、お客様にとっては嬉しいサービスです。お料理を待つ間、近くにある印旛沼や宗吾霊堂といった名所を散策するのも、成田湯川駅エリアの旅の楽しみの一つではないでしょうか。待ち時間を経て出会う、香ばしさが際立つい志ばしのうな重は、忘れられない旅の思い出になることでしょう。テイクアウトも受け付けているため、お持ち帰りにして自宅でゆっくり味わうこともできます。