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東京都江東区白河の深川江戸資料館通りに店を構える日吉屋は、1917年(大正6年)創業の老舗そば店です。東京メトロ半蔵門線・都営大江戸線の清澄白河駅からほど近く、深川の歴史と食文化を今に伝えています。青いのれんには「そば」「石臼挽き」の文字が染め抜かれ、木格子を生かした昔ながらの店構えが印象的です。店内にはテーブル席のほかに畳敷きの座敷も設けられ、下町らしい落ち着いた雰囲気のなかで食事を楽しめます。
日吉屋の大きな特徴は、そば屋としての伝統を守りながら、江戸時代に親しまれた食文化の再現にも取り組んでいることです。その代表が、深川名物として知られる一本うどんです。一般的なうどんとは異なり、極太の麺を1本に仕立てた珍しい料理で、池波正太郎の時代小説『鬼平犯科帳』にも登場します。かつて江戸で親しまれながら、戦後にはほとんど姿を消してしまった料理を復活させたものです。
一本うどんの復活には、先代から受け継がれたレシピにまつわるエピソードが残されています。2012年ごろ、当時の3代目店主だった眞野さんは、深川名物として一本うどんをよみがえらせようと試作を重ねていました。その過程で偶然見つかったのが、父親の残した手帳です。そこには、かつて台東区の料理店から教わった一本うどんの作り方が記されていました。長年眠っていたレシピを手がかりに、試行錯誤の末、再現に成功したという経緯があります。単に昔の料理を再現するだけでなく、途絶えかけていた江戸の食文化を次の時代へ伝えようとした取り組みが、この一品に込められています。
そばのメニューで知られるのが、恵比寿せいろです。たっぷりの海老が入った温かいつゆに、冷たいそばをつけていただく料理で、海老の風味とそばの味わいを一緒に楽しめます。冷たい麺と温かなつゆを組み合わせた食べ方も特徴で、一本うどんと並ぶ日吉屋の代表的なメニューです。店先に掲げられた石臼挽きの文字からも、そば作りを大切にする姿勢がうかがえます。
もうひとつ注目したいのが、深川の郷土料理である深川丼です。江戸時代の深川は、江戸前の海で貝類を採る漁師の町として栄えました。深川丼は、漁師たちが手早く食べられる食事として親しんだ料理に由来し、あさりなどの貝とねぎを使った汁をご飯にかける食べ方が伝わっています。日吉屋でも深川丼を楽しめるほか、深川丼膳や深川そばといったメニューが知られています。そばだけでなく、この土地に根づいた食文化にも触れられるところが魅力です。
お店の周辺には、江戸時代の深川の町並みを実物大で再現した深川江戸資料館があり、食事とあわせて訪れるのもおすすめです。古くから続く商店と新しいカフェが共存する清澄白河の街を歩きながら、江戸の暮らしや食文化に思いを巡らせることができます。日吉屋は、100年以上の歴史を持つそば店として、昔ながらの味わいと忘れられかけた郷土料理の両方を楽しめる一軒です。
| 住所 | 東京都江東区白河2-3-14 |
|---|---|
| 電話 | 03-3642-0085 |
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