大分県別府市の「地獄めぐり」のなかでも、泉温98度という熱い噴気が湧き出すかまど地獄の園内にあるのがかまど茶屋です。ここは、旅の途中でほっと一息つける休憩スポットとして、国内外の多くの観光客に親しまれている場所です。

このかまど茶屋の特徴は、園内で楽しめるさまざまな「地獄グルメ」にあります。地獄の噴気を利用して調理する食文化は、古くからこの地に根付いてきました。かまど地獄という名前も、古来、氏神様である八幡竈門神社の大祭の際、地獄の噴気を利用して御供飯を炊いていたことに由来していると言われています。現代では、この高温の蒸気を活かしたグルメを気軽に味わうことができるのが魅力です。

お店にしかないユニークな体験としては、地獄の恵みを肌で感じられる足湯コーナーが併設されている点があげられます。源泉かけ流しの足湯が無料で利用でき、数種類の足湯が用意されているため、地獄めぐりで歩き疲れた足を癒すのにぴったりです。また、飲泉可能な80度の「飲む温泉」や、手・足の湯の“蒸し湯”など、美容や保湿効果が期待できる温泉を実際に体験できるコーナーもあるのも、温泉地ならではの特別なサービスと言えます。お土産処地獄やわきやでは、別府明礬温泉で採取される湯の花の原料「明礬クレイ」を配合した、この土地ならではのクリームやパックなどのオリジナル商品も販売されています。

ここでは地獄の熱い蒸気で長時間蒸しあげる温泉ピータンが名物です。このたまごは、24時間以上蒸し続けることで白身の部分が茶色く変色し、中国料理のピータンに似た色合いになることから、その名前が付けられました。口に含むと、ほのかな硫黄の香りと、たまごの旨味を引き立てる絶妙な塩気が感じられる、独特な味わいが特徴です。

また、デザート類も充実していて、お土産としても人気を集めています。特に、地獄蒸しで焼き上げた醤油ぷりんは、レアチーズケーキのようなまろやかさと甘さひかえめの濃厚な風味が評判の一品です。この醤油ぷりんに加えて、試作を重ねて完成した、なめらかで奥深い味わいが楽しめる抹茶ぷりんもおすすめです。さらに、見た目のインパクトも楽しい赤鬼ソフトは、バニラソフトクリームに七味をかけた、甘いのに少しピリッとした甘辛さがクセになる変わり種ソフトクリームとして知られています。抹茶の石垣まんじゅうも人気があり、地獄蒸しでじっくりと加熱されたとうもろこしやさつまいもなどもメニューに並ぶことがあり、地獄の噴気を活かした多様な食の魅力を堪能できる、賑やかな場所です。

インドネシア出身のオーナーが営む自家焙煎コーヒーの専門店です。2025年にオープンしたこちらのお店は、南の島インドネシアの豊かな風土が育んだコーヒー文化を、別府の街に紹介したいという想いから始まりました。店名の「SOUTH」には、オーナーのルーツである南半球の温かなイメージと、訪れる人々を包み込むような優しさが込められています。店内は木の温もりに包まれたモダンで開放的な空間が広がり、日常の喧騒を忘れてゆっくりと羽を伸ばせる雰囲気に満ちています。

最大の特徴は、オーナー自らが厳選し、店内で丁寧に焙煎されたインドネシア産の高品質なコーヒー豆を堪能できることです。世界有数のコーヒー生産国であるインドネシアには、マンデリンやバリ、トラジャなど、島ごとに個性が異なる豆が数多く存在します。こちらでは、それらの豆の特性を最大限に引き出すため、焙煎の時間や温度に細心の注意を払っています。一杯ずつ丁寧にハンドドリップで淹れられる様子を眺めていると、立ち上る香ばしい香りと共に、遠く離れた南国の情景が目に浮かぶようです。

お店を訪れたらまず味わいたいのが、インドネシア産シングルオリジンコーヒーです。特有の深いコクと大地のような力強い香り、そして後味に広がるほのかな甘みは、コーヒー好きを唸らせる贅沢な味わいです。苦味と酸味のバランスが絶妙で、ブラックで飲むとその豆本来のポテンシャルをダイレクトに感じることができます。また、コーヒーと一緒に楽しめる自家製のスイーツも人気で、特に手作りケーキは、コーヒーの深い味わいを引き立てるよう甘さを控えめに仕上げられており、午後のティータイムを格別なものにしてくれます。

他にも、ミルクとの相性を考え抜いて焙煎された豆を使用したカフェラテは、きめ細やかな泡立ちとまろやかな口当たりが特徴で、コーヒーの苦味が苦手な方にも愛されています。さらに、インドネシアの伝統的な飲み方をアレンジしたメニューや、季節ごとに登場する限定のオリジナルドリンクなど、訪れるたびに新しい発見があるのもこのお店の魅力です。店内に飾られたインドネシアの工芸品や現地の写真が、さらに異国情緒を盛り上げてくれ、別府にいながらにして南国のカフェを旅しているような贅沢な気分に浸ることができます。

昭和初期のレトロな面影を残す落ち着いた雰囲気の茶房です。1981年（昭和56年）の創業以来、地元の方々や観光客に親しまれてきましたが、もともとは昭和初期に建てられた炭鉱主の別荘でした。戦災を免れた貴重な日本家屋の美しさに魅了された店主が、その趣を大切に守りながらカフェとして再生させました。道路拡張工事に伴い、建物をそのまま90度回転させて移動させるという大規模な曳家（ひきや）工事を経て、2020年（令和2年）7月に現在の場所でリニューアルオープンを果たし、別府の歴史を今に伝えています。

このお店の最大の魅力は、一歩足を踏み入れるとタイムスリップしたかのような感覚を味わえる、重厚で温かみのある空間です。高い天井を支える太い柱や、時を経て深い飴色に輝く松の廊下、そして創業当時から大切に使い続けられているアンティークのテーブルや椅子が、お屋敷としての品格を物語っています。鹿鳴館をイメージして改装されたという店内には、手入れの行き届いたお庭を眺められる縁側もあり、格子戸越しに差し込む柔らかな光が、心穏やかなひとときを演出してくれます。別荘時代の面影を随所に残しながらも、どこか懐かしく温かい「おばあちゃんの家」に帰ってきたような心地よさが、多くの人々を惹きつけてやみません。

お食事の看板メニューとして愛されているのが、大分の郷土料理を存分に堪能できるだんご汁定食です。こちらのだんごは、小麦粉を練って一本一本丁寧に手延べした平打ちの麺状なのが特徴で、もちもちとした食感が楽しめます。白菜や人参、ごをご、なすといった季節の野菜がたっぷり入った優しい味噌仕立てのスープに、大分特産のかぼすをキュッと絞れば、爽やかな香りが広がり最後までさっぱりといただけます。小鉢やご飯、お豆腐などがセットになった定食は、栄養バランスも良く、心もお腹も満たされる滋味深い味わいです。

甘味メニューも充実しており、特に大分名物のやせうまは外せません。だんご汁と同じ手延べのだんごに、たっぷりのきな粉と砂糖をまぶした素朴なおやつで、噛みしめるほどに小麦の旨みが広がります。こちらでは定番のきな粉だけでなく、濃厚な黒蜜をかけた黒蜜やせうまもあり、少しモダンなスイーツとして楽しむこともできます。夏季に登場するかき氷も名物の一つで、自家製のシロップや小豆をふんだんに使った山盛りの氷は、暑い日の別府散策のご褒美にぴったりです。また、香り高い信濃屋ブレンドコーヒーは、歴史ある建物の雰囲気に合わせて選ばれた深みのある味わいで、和菓子との相性も抜群です。

お店を訪れる際は、駐車場に限りがあるため、駅からのんびりとお散歩を楽しみながら向かうのがおすすめです。歴史的な建物を大切に使用しているため、廊下の段差や建具の扱いには少しだけ優しく接したいですね。また、人気のメニューは売り切れてしまうこともあるため、少し早めの時間帯に訪れると、よりゆったりと静かな時間を過ごすことができます。

大きな椎茸の看板が目印の乾しいたけ専門店です。創業は1966年（昭和41年）で、もともとは椎茸農家だった家系が別府に居を構え、県内の生産者から椎茸を預かって販売する入札市場を開設したのが始まりです。現在の社長で4代目を数え、およそ60年にわたって大分の豊かな自然が育んだ上質な椎茸を全国に届けています。大分県は乾しいたけの生産量が日本一として知られていますが、こちらのお店は市場としての機能も持ち合わせているため、プロの目利きによって選りすぐられた最高級の椎茸が店内にずらりと並びます。

こちらのお店には、伝統を大切にしながらも、現代のライフスタイルに合わせて椎茸の魅力を広めたいという熱い想いがあふれています。その象徴ともいえるのが、2017年のリニューアル時に誕生したイートインスペースSHIITAKE STAND CONONです。ここでは「乾しいたけを戻す時間を待てない」という現代人の声に応え、あらかじめコンソメで丁寧に戻した椎茸を串焼きにして提供するなど、驚きのアイデアで新しい美味しさを提案しています。椎茸には、乾燥させることで旨みと香りが科学的に増すという特性があり、その奥深い魅力を気軽に体験できる場所として、地元の人から観光客まで幅広く愛されています。

お店を訪れた際にまず味わっていただきたいのが、SNSなどでも話題のしいたけソフトクリームです。乾しいたけのパウダーと醤油をキャラメルフレーバーに練り込んだユニークな一品で、椎茸に含まれる旨み成分がミルクのコクを驚くほど引き立てています。甘さの中にほんのりと広がる椎茸の風味は、一度食べると癖になる濃厚な味わいです。また、お食事メニューとして人気なのが、大分県産のブランド豚と椎茸を甘辛く煮絡めた椎豚丼です。肉厚な椎茸から溢れ出す旨みがお肉と絶妙に調和し、ご飯が進む満足感たっぷりの丼に仕上がっています。

お土産やご家庭用には、手間をかけずに本格的な出汁が取れる別府のお友だしがおすすめです。椎茸のパウダーに厳選された素材を組み合わせた出汁パックで、お味噌汁や煮物の味が格段に上がると評判です。また、料理の仕上げにひと振りするだけで風味が増すしいたけパウダーは、忙しい毎日の強い味方として大人気の商品です。店内には、贈答用の立派などんこ椎茸の量り売りから、手軽なプチギフトまで豊富に揃っており、スタッフの方が椎茸の戻し方や美味しいレシピを丁寧に教えてくれるのも嬉しいポイントです。

多くの人に愛されてきたスペシャリティコーヒーの専門店です。もともとは大分市内で親しまれていたお店ですが、2024年4月に大分市生石の海沿いへと拠点を移し、現在はwitch coffee mareとして新しい物語を紡いでいます。オーナーの古川さんは、お店を訪れる人々が自分の居場所のようにくつろげる空間づくりを何よりも大切にされており、その温かなおもてなしの心は別府時代から変わることなく引き継がれています。店名の「witch（魔女）」には、日常の中に少しだけ魔法のような特別な時間を届けたいという願いが込められており、スタッフの方々が黒を基調とした装いで迎えてくれるスタイルも印象的です。

こちらのお店の最大の特徴は、全席から美しい海の景色を眺めることができるオーシャンビューのロケーションです。別府湾の穏やかな波の音を聴きながら、厳選された最高品質のスペシャリティコーヒーを楽しむ時間は、まさに日常を忘れるひとときです。注文を受けてから豆を挽き、一杯ずつ丁寧にハンドドリップで淹れるスタイルを貫いており、豆本来の豊かな香りと複雑な味わいを最大限に引き出しています。かつて別府や南大分の店舗を訪れていたファンも、この素晴らしい景色と変わらぬ美味しさを求めて、わざわざ足を運ぶほど親しまれています。

コーヒーメニューの中でも特におすすめなのが、季節ごとに内容が変わる季節のハウスブレンドです。その時期に最も美味しい豆を組み合わせ、フルーティーな酸味と深いコクが絶妙なバランスで仕上げられており、何度訪れても新しい発見があります。また、コーヒーの深い味わいに寄り添う自家製スイーツも充実しています。特にベイクドレアチーズケーキは、濃厚ながらも後味はすっきりとしており、香り高いコーヒーとの相性が抜群です。さらに、オーシャンビューの開放的な気分にぴったりなカフェラテは、きめ細やかなミルクの甘みがコーヒーの苦味を優しく包み込む、まろやかな一杯です。

お食事を楽しみたい方には、新店舗からさらに充実したランチメニューも人気です。外はカリッと、中はふわふわに仕上げられた焼き立てフレンチトーストは、数量限定のため早めの時間に売り切れてしまうこともある看板メニューです。海を眺めながらいただく温かいお料理とコーヒーは、体も心も芯から解きほぐしてくれるようです。また、見た目にも華やかなシェイクやフロートといったドリンクもあり、コーヒーが苦手な方やご家族連れでも、それぞれのスタイルで贅沢な時間を過ごすことができます。

お店を訪れる際は、窓側の席が特に人気のため、ゆったりとした時間を過ごしたい方は平日の午前中などが狙い目です。海辺という立地上、季節や時間帯によって刻々と変化する空と海の色を楽しみながら、お気に入りの一杯を見つけてみるのが素敵ですね。大分市街地から別府へと続く海岸線に位置しているため、ドライブの途中に立ち寄るのにも最高の場所です。