日本のクラフトビールシーンを牽引してきた「麦酒倶楽部ポパイ」が2020年に設立したマイクロブルワリーです。
単なる醸造所にとどまらず、「ビールは一期一会であってはならない」という揺るぎない哲学のもと、常に安定して「当たり前においしいビール」を追求し続ける、まさに「ビールの研究所」として注目を集めています。

この研究所が目指すのは、一過性のブームではなく、「おいしいビールを日常的に楽しめる文化」の創造です。そのこだわりは、ビールの根幹を成す「酵母」と「水」への徹底的な探求に集約されています。
一般的なブルワリーが酵母を外部から購入したり、再利用したりするのに対し、両国麦酒研究所では、ビールの仕込みごとにブルワリー内に設けたラボで自家培養した新鮮な酵母を使用するという、非常に手間暇のかかる手法を採用しています。
醸造長の小林裕貴氏は、「フレッシュな酵母のほうがおいしいビールができるから」と語り、そのシンプルな理由が、一切の妥協を許さないビール造りの姿勢を物語っています。

さらに、ビールの味を左右する重要な要素である「水」にも並々ならぬこだわりを見せています。日本の水は一般的に軟水ですが、両国麦酒研究所では、純水装置を用いて一度水の硬度をほぼゼロにまで落とし、そこから各ビールのスタイルに最適な硬度に調整するという独自のプロセスを踏んでいます。
例えば、ペールエールを造る際には、そのルーツであるイギリス・バートンの水質に合わせるなど、細部にわたる調整を行うことで、それぞれのビールの個性を最大限に引き出しています。
この酵母と水の管理こそが、両国麦酒研究所のビール造りの「土台」であり、どのようなスタイルのビールであっても「ここさえしっかりしていれば、上に何が載ってきても大丈夫」という揺るぎない自信の源となっています。

300リットルのタンクが6基並ぶ醸造設備は常にフル稼働しており、ゴールデンスランバーペールエール、ピックヘッドIPA、彩雲ベルジャンホワイト、両国エールなど、多種多様なビールが次々と生み出されています。

両国麦酒研究所が「麦酒倶楽部ポパイ」と密接な関係にあることも、その魅力の大きな柱となっています。
ポパイは1985年に洋風居酒屋として創業後、1996年にはクラフトビール専門のビアバーへと転身し、日本のクラフトビール黎明期から業界を牽引してきました。
常時70種類以上ものクラフトビールを樽生で提供し、「クラフトビールの聖地」と称されるポパイの長年の経験と知識が、両国麦酒研究所のビール造りに引き継がれています。
ポパイでは、「セラーマン」と呼ばれる専門スタッフが、ビールのガス圧や温度、グラスの形状、注ぎ方に至るまで、そのビールのポテンシャルを最大限に引き出すための徹底した管理を行い、最高の状態で提供しています。