1946年創業の歴史を持つ老舗喫茶店です。
終戦直後の1946年、広島駅前で「末広食堂」として開業したことに遡ります。1952年に現在の地に移転し、喫茶店として再スタートしました。
この店の最大の特徴は、現存する喫茶店の中で「モーニングサービス」を最も早く提供し始めたという歴史的背景にあります。
戦後の広島復興の願いから生まれた一杯のコーヒーとトーストのセットは、今や全国に広がる日本の喫茶店文化の原点の一つとして、地元の人々だけでなく、多くの旅行者に愛され続けています。
モーニングサービスは、初代店長の発案により、1955年（昭和30年）頃にサービスが開始されました。
当時のコーヒー代が50円の時代に、わずか10円増しでトーストと目玉焼きを添えたこのセットは、たちまち人々の間で話題となりました。
1956年に撮影された当時の外観写真には、すでに「モーニングサービス」の看板が掲げられており、その記録は現存する店舗としては日本最古とされています。
サービスの始まりには、初代店長の深い思いが込められています。
店舗周辺は、広島赤十字・原爆病院など医療機関が集中するエリアであり、戦後、傷ついた人々を昼夜問わず治療する医師や看護師たちに、栄養価の高い食事を提供することで「元気になってほしい」という強い願いがありました。当時まだ高価だった卵やパン、そしてコーヒーをセットにした「夢の三点セット」は、店の利益を減らしてでも、広島の復興と人々の活力を支えたいという、初代店長の人間愛と平和への願いの象徴でもあったのです。