東銀座駅から歩いてすぐ、国の登録有形文化財である歌舞伎座の裏手に、地元の方々や多くのファンに長年愛され続けている喫茶店、アメリカンがあります。1983年にオープンしたこちらのお店は、マスターである原口誠さんの人柄と、豪快なボリュームのサンドイッチで知られる名店です。喫茶店としては珍しい、朝と昼の2部制で営業しており、平日のみの営業にも関わらず、開店前から行列ができる東銀座の名物スポットになっています。

このお店の何よりの特徴は、その圧倒的なサンドイッチのボリュームです。特に看板メニューのタマゴサンドは、お皿に乗り切らないほどのタマゴサラダが、分厚く切られた食パンの上に山盛りになった姿に誰もが驚いてしまいます。その量たるや、一食で約1斤の食パンと卵8個分程度が使われていると言われるほどです。この規格外のボリュームが生まれた背景には、マスターの温かいサービス精神と、あるエピソードがあります。創業当初は普通のボリュームでしたが、バブル崩壊後の厳しい時期に「最後にお客さんへ恩返しをしたい」という思いから、サンドイッチをてんこ盛りで提供したところ、かえってそれが大ヒットとなり、お店は再び脚光を浴びることになったそうです。この思いやりは今も続いており、ほとんどのお客様が食べきれないことを見越して、お店では持ち帰り用のパックとビニール袋を無料で渡してくれる心遣いがデフォルトになっています。

サンドイッチの美味しさの秘訣は、ボリュームだけではありません。食パンは地元のベーカリーから1日に2回、焼きたてのアツアツが直送され、マスターの「パンも炊きたてのご飯と同じく焼きたてが一番美味しい」という強いこだわりが詰まっています。このほんのり甘い厚切りパンに挟まれる主役の具材、タマゴサラダも格別です。ゴロッとした固ゆで卵にマヨネーズと白コショウがシンプルに味付けされていますが、タマゴ本来の風味を最大限に引き出すため、あえて少し白身を間引くといった細やかな工夫がされているのが特徴です。この唯一無二のタマゴサンドは、アメリカのCNNなど海外メディアにも取り上げられたことから、今や世界中からこの味を求めて外国人観光客も多く訪れるようになり、メニューにも多言語表記が用意されています。

他にもサンドイッチのメニューは豊富に揃っていて、スパイスの効いたパストラミビーフや、ジューシーなハンバーグサンド、シンプルながら満足感のあるツナサンドなど、バリエーションに富んだ品々が並びます。どのサンドイッチも具材がたっぷりと豪快に盛り付けられており、パンの美味しさと相まって、どのメニューを選んでも満たされること間違いなしです。また、サンドイッチとセットで注文するドリンクもジャンボサイズで提供される点も、お店の気前の良さを感じさせます。レトロな雰囲気の店内には、マスターと交流のある著名人のサインや写真が飾られ、お店の歴史と賑わいを物語っています。

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