栃木県の東部に広がる馬頭温泉郷のなかで、一際歴史を感じさせる温泉旅館が元湯 東家です。関東随一の清流として知られる那珂川のほとり、美しい自然に囲まれた場所に、この宿は佇んでいます。歴史を遡ると、万延元年である1860年頃、雪に覆われた那珂川の川原に雪が積もらない場所があり、そこから源泉が発見されたという古文章も残っているほど、馬頭温泉の草分け的存在として知られています。約150年も前から続く湯の恵みを、今もそのままに大切に守り続けている、里の湯浪漫に満ちた宿です。

元湯 東家の大きな魅力は、何と言ってもその自慢の温泉にあります。那珂川の川底から湧き出た源泉を引くお湯は、弱アルカリ性の泉質で、まるで美容液のようにとろりとした肌触りが特徴です。湯口から注がれるとろみのあるお湯に浸かると、体を芯からじんわりと温めてくれ、湯上がりはつるりと滑らかになることから、古くから「美人の湯」として親しまれてきました。特に女性のお客さまからの人気が高く、その美肌効果を求めて訪れる人も多いそうです。浴場は、木のぬくもりが心地よいヒノキ造りの内湯と、那珂川の流れを目の前に臨む開放的な露天風呂があり、男女とも24時間いつでも好きな時間にご入浴いただけます。目の前には雄大な那珂川の景色が広がり、遠くに沈む夕陽や満天の星空を眺めながら、ゆったりと心穏やかな時間をお過ごしいただけます。ただし、開放的な露天風呂は土日祝日のみのご利用となっているため、事前に確認してお出かけください。

お食事では、地元の旬の食材をふんだんに使った「田舎のごちそう」が、訪れる人々の心と体を温めてくれます。素朴ながらも手間ひまかけて作られた手作りの品々は、どこか懐かしさを感じる心尽くしのおもてなしです。

那珂川町の特産品であるイノシシ肉を使ったボタン鍋は、ぜひ味わっていただきたい名物料理の一つです。地元で獲れた新鮮なイノシシ肉は、くせがなくしっかりとした歯ごたえがあり、味噌仕立ての野菜たっぷりのお鍋で提供されます。味噌の風味と野菜の甘みが引き立て合い、お箸が止まらない美味しさです。また、海のない栃木県でありながら、那珂川町では全国に先駆けてとらふぐの養殖に取り組んでおり、その味わいは海で育ったものよりも上回ると評判です。繊細なとらふぐ料理は、フグ刺しやお鍋で格別の贅沢を堪能できます。さらに、目の前を流れる清流那珂川で獲れる鮎の塩焼きは、その時期により若鮎、落ち鮎、氷魚と、季節ごとに移り変わる風味を楽しめます。地元で親しまれている赤身の馬刺しも、厚めに切ってショウガニンニク醤油でいただけば、お肉本来の旨味が口いっぱいに広がり、こちらも人気の料理となっています。ご飯には、地元の契約農家から仕入れた馬頭産のコシヒカリが使われており、お米の美味しさも旅の思い出を彩ってくれます。