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熱海の街で3代にわたり味を受け継いできた、1931年創業の老舗中華料理店が味の幸華です。初代・飯田祐幸さんが神奈川県平塚市で店を開いたのが始まりで、その後、昭和前半に熱海へ移り、糸川沿いで屋台を営むようになりました。1950年には熱海の市街地を襲った熱海大火が起こり、店の歩みも大きな影響を受けています。現在は早咲きの「あたみ桜」で知られる糸川遊歩道のそばで暖簾を掲げ、昔ながらの料理に新しい感覚を取り入れながら営業を続けています。麺をはじめ、餃子やワンタンの皮まで店で作る手仕事も大切にされています。
味の幸華の歴史を語るうえで欠かせないのが、文豪・坂口安吾との縁です。熱海に親しんだ安吾は店を訪れ、幸華特製 五目そばを好んだと伝わっています。現在も人気メニューとして受け継がれる一杯で、野菜のほかエビやカニ、豚肉などさまざまな具が入り、卵も添えられた華やかな姿が特徴です。熱海では小説家をはじめ多くの文化人が過ごしてきましたが、料理を通してそんな時代の面影に触れられるのも、この店ならではの楽しみです。坂口安吾のほか、漫画家の赤塚不二夫、ミュージシャンの内田裕也らが訪れたことを伝えるサインも残されています。
もうひとつの看板料理が幸華特製ジャンボ焼売です。初代が作った焼売が東京名店街のコンクールで評価され、取材を受ける際にいつもよりひと回り大きく作ったところ評判となり、現在のジャンボサイズにつながったというエピソードが残っています。祖父の代から3代にわたって受け継がれ、今も店内で1個ずつ手作りされています。2012年には、熱海ならではの魅力ある商品を選ぶ「熱海ブランド A-PLUS」に認定されました。単に大きさで目を引くのではなく、店の歴史そのものが詰まった名物です。
創業当時から続く料理として揚げ焼きそばも外せません。自家製の細麺を揚げ、野菜や魚介を使ったあんを合わせる一品で、パリッとした麺とあんがなじんでいく食感の変化を楽しめます。3代目の飯田豪さんは横浜中華街で修業したのち店を継ぎ、代々の料理を守るだけでなく、新しいメニューも加えてきました。初代から伝わる味をそのまま固定するのではなく、時代に合わせて少しずつ整えてきたことが、90年以上続く店の味につながっています。
ほかにも、特製窯でじっくり焼き上げる幸華特製チャーシューは、前菜やおつまみだけでなく幸華特製チャーシュー麺でも味わえる自家製の名物です。肉入りのワンタンを香ばしく揚げた揚げワンタン、大ぶりのエビを使った大えびのチリソース、海の幸を楽しめる海鮮焼きそばなど、中華料理店らしい幅広い料理もそろいます。観光地として華やかな熱海のなかで、昭和初期から続く食文化と家族の手仕事を今へつないでいる味の幸華は、温泉街の歴史まで一緒に味わいたいときに訪れたい一軒です。
| 住所 | 静岡県熱海市渚町12-11 |
|---|---|
| 電話 | 0557-81-3901 |
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