東京都中央区、華やかな銀座の並木通りに位置するTHE SEIKO MUSEUM GINZA（セイコーミュージアム 銀座）は、日本の時計産業を牽引してきたセイコーグループの企業博物館です。もともとは1981年に創業100周年を記念する事業の一環として、墨田区に「時と時計」に関する資料館として設立されました。その後、創業者の服部金太郎氏の生誕160周年にあたる2020年8月、服部氏が事業を興した創業の地である銀座へと移転し、セイコーミュージアム 銀座として装いも新たに開館しました。こちらでは、セイコーの製品がたどった歴史だけでなく、日時計や和時計など世界の時と時計の進化の歩みを幅広く紹介していて、大人の方はもちろん、お子様も楽しみながら学ぶことができる施設として人気を集めています。ご来館は、事前予約制で、入館料は無料なのも嬉しいところです。

このミュージアムの大きな特徴は、何といっても外観にレイアウトされたからくり時計の存在です。高さおよそ5.8メートルにもおよぶ大型振り子時計「RONDEAU LA TOUR（ロンド・ラ・トゥール）」がビルの正面でお客様をお迎えしています。30分ごとや、毎正時には優しいメロディと共に人形が動き出し、歯車を回す可愛らしい演出を見せてくれます。そのゆっくりとした動きは、見る人の心を和ませ、銀座の新しいランドマークとしても親しまれています。館内に入ると、地下1階から5階まで、それぞれにテーマを持った6つのフロアで展示が構成されています。

創業の精神を感じられる2階は「常に時代の一歩先を行く」というテーマを掲げ、創業者である服部金太郎氏の足跡と、セイコーの創業史にまつわる貴重な品々を展示しています。彼の挑戦と努力の物語は、日本の時計産業の近代化を推し進め、「東洋の時計王」と呼ばれた人物の情熱が伝わってくるようです。また、3階の「自然が伝える時間から人がつくる時間」のコーナーでは、日時計から始まる世界の時計の歴史に加え、江戸時代に日本で独自に発達した和時計のコレクションなど、セイコー製品以外の歴史展示も充実していて、時計の奥深い歴史に触れることができます。

さらに時計の進化と技術の粋を集めた展示も魅力です。地下1階の「極限の時間」というテーマのフロアでは、オリンピックなどの国際大会で活躍したセイコーのスポーツ計時技術や、探検家・アスリートを支えてきたスポーツウオッチなど、極限の環境に挑むための技術を体感できます。一方、4階の「精巧な時間」では、創業初期から1960年代のクオーツ腕時計に至るまでのセイコーの歴代製品が並び、日本の時計製造技術の精巧な発展を辿ることができます。そして5階の「いろいろな時間」のフロアは、1970年代以降の多様な製品群を紹介しており、世界的な高級ブランドとして知られるグランドセイコーやGPSソーラーウオッチのアストロンといった、現代のセイコー製品の歴史が凝縮されています。このように、それぞれのフロアをめぐることで、時間の概念そのものから、日本の時計産業の未来までをじっくりと見つめることができる、まさに時と時計の専門ミュージアムです。