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伊勢神宮への玄関口として親しまれる宇治山田駅は、列車を乗り降りするためだけの施設ではなく、昭和初期の駅舎建築を現在まで伝える見応えのある建物です。1931年、参宮急行電鉄の終着駅として開業しました。設計を手がけたのは、鉄道省で初代建築課長を務め、駅舎建築に深く携わった建築家の久野節です。鉄骨鉄筋コンクリート造3階建てで、南西側の塔屋を含めると5階建てとなり、横幅は約120mから128mに達します。大勢の参拝客を受け入れる交通拠点にふさわしく、堂々とした規模と、利用しやすい動線を兼ね備えた駅舎として計画されました。
外観を眺めると、長く水平に伸びる建物の端に高い塔屋を置き、横方向の広がりと縦方向の高さを組み合わせていることが分かります。建物全体は比較的すっきりとした矩形ですが、一定の間隔で並ぶ縦長の窓や、南西端にそびえる塔屋がリズムを生み、単調に見せません。塔屋は駅前からの目印となり、遠くからでも玄関口だと分かる象徴的な役割を担っています。大きな駅舎をひとつの塊として見せるのではなく、窓、軒、塔屋の高さを細かく変え、軽やかさを加えている点が魅力です。
壁面は淡いクリーム色のタイルで包まれ、窓まわりなどには焼き物の装飾材であるテラコッタが使われています。屋根の一部にはスペイン瓦が取り入れられ、全体はスパニッシュ様式を基調としています。装飾を過剰に重ねるのではなく、明るい外壁と赤みを帯びた瓦、立体感のあるテラコッタを組み合わせることで、華やかさと落ち着きを両立させています。神社建築を直接まねた和風の駅舎ではなく、当時の新しい都市建築らしい洋風意匠を選んでいる点も印象的です。伊勢神宮へ向かう旅の始まりを、近代的で格調のある建築によって演出しようとした意図が感じられます。
駅内で特に目を引くのが、2階まで吹き抜けた広いコンコースです。高い天井によって視界が上へ抜けるため、大きな建物の中でも圧迫感が少なく、参拝客が集まる場にふさわしい開放感が生まれています。外観では横に長い端正な姿を見せながら、内部では高さを生かした大空間へ切り替わる構成に、久野節の駅舎設計の巧みさが表れています。高架ホームを上階に設け、その下を改札や待合の空間として使うことで、列車の動きと人の流れを立体的に整理している点も重要です。外から見た記念建築としての美しさと、交通施設としての実用性が無理なく結びついています。
伊勢神宮には皇族をはじめ多くの賓客が訪れたため、駅舎内には貴賓室も設けられました。一般の利用空間とは別に格式ある部屋を備えたことからも、宇治山田駅が単なる地方駅ではなく、国を代表する参宮地の玄関として特別な役目を与えられていたことが伝わります。駅舎そのものが旅人を迎える「門」のように考えられ、外観の塔屋、吹き抜けのコンコース、貴賓室まで、到着時の高揚感を段階的に高める構成となっています。
建築を楽しむ際は、まず駅前広場側から少し離れて眺め、約120mにわたる水平の広がりと塔屋の位置関係を確かめてみてください。その後、外壁に近づき、クリーム色のタイル、テラコッタの凹凸、縦長窓の連なり、スペイン瓦の色合いを見ると、遠景と近景で印象が変わります。駅内では、吹き抜けを見上げ、柱や壁面がつくる縦の線と、広い床面がつくる横の線を比べるのがおすすめです。現在も現役の駅として使われているため、通行を妨げず、立入禁止区域には入らないよう気をつけながら見学してください。2001年には国の登録有形文化財となり、昭和初期の鉄道建築を今に伝える建物として大切に受け継がれています。
| 住所 | 三重県伊勢市岩渕2丁目1 |
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近畿日本鉄道の宇治山田駅の駅情報です。…