【世界遺産 ドイツ/ハンブルクの倉庫街と商館街】ビートルズを育んだ港町 2026/9/13放送

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ハンブルクの倉庫街と商館街

ドイツを代表する港町ハンブルクで、19世紀末から20世紀前半にかけて急速に広がった国際貿易の姿を、倉庫とオフィス建築の両方からたどれる世界文化遺産です。ハンブルクの倉庫街と商館街(チリハウスを含む)は、エルベ川沿いのシュパイヒャーシュタットと呼ばれる倉庫街と、その北側に広がるコントーアハウス地区を一体として評価したもので、2015年に世界遺産へ登録されました。登録基準は文化遺産の基準(iv)で、世界遺産としての登録面積は26.08haです。港で荷物を保管する巨大な倉庫群と、その貿易を動かす商社や船会社などの事務所街が隣り合って残り、ハンブルクが世界有数の港湾都市へ成長していった時代を街並みそのものから感じ取れます。

シュパイヒャーシュタットは、エルベ川の細長い島々を利用しながら1885〜1927年に段階的に整えられた倉庫地区です。約1.1kmにわたって15の大規模な倉庫ブロックが連なり、運河、石畳の道、橋が複雑につながっています。赤いレンガを使った建物にはネオゴシックやネオロマネスクの装飾が見られ、一見すると重厚な歴史建築ですが、建設当時は電気設備や油圧式の巻き上げ機など新しい技術も積極的に取り入れられました。倉庫の水路側と道路側の両方から荷物を出し入れできるつくりも、港での仕事を効率よく進めるための工夫です。第2次世界大戦では大きな被害を受け、戦後の1949〜1967年に一部が再建されましたが、赤レンガの倉庫群と水路がつくる景観は今も街の大切な歴史として守られています。

一方のコントーアハウス地区は、港湾関係の企業が集まる近代的なオフィス街として20世紀前半に形づくられました。「コントーア」は商館や事務所を意味し、倉庫街で扱われる世界各地の商品を、すぐ近くのオフィスで管理するという役割分担が街づくりにも表れています。1920年代を中心に大型のオフィス建築が次々と建ち、レンガを使いながら幾何学的な装飾や力強い輪郭を見せる「レンガ表現主義」の街並みが生まれました。ヨーロッパでも早い時期につくられた本格的なオフィス専用地区として知られ、現在も多くの建物が仕事の場として使われています。

なかでも象徴的なのがチリハウスです。建築家フリッツ・ヘーガーが設計し、南米チリで硝石事業を成功させた実業家ヘンリー・B・スローマンの依頼で1922〜1924年に建てられました。街路が鋭く交わる場所に合わせて東端を細く絞った姿は船首のように見え、ハンブルクの港町らしさを感じさせます。10階建ての大きな建物ながら、暗赤色から紫色を帯びたクリンカー煉瓦の細かな積み方や彫刻が外観に豊かな表情を加えています。現在も上階を中心にオフィスとして使われ、通り抜けられるアーチや中庭の周辺には店舗や飲食店も入り、保存された歴史建築が日常の街の一部として生き続けています。

世界遺産の商館街側で価値を支える主な8つのオフィス建築は、チリハウスメスベルクホーフシュプリンクホーフモーレンホーフモンターホーフ、ニーデルン通り10番地の旧郵便局建物コントーアハウス・ブルヒャルト通り19-21番地ミラマールハウスです。これらとシュパイヒャーシュタットの15の大型倉庫ブロック、付属建築、運河、道路、橋などがまとまりとなり、港で「商品を保管する場所」と「貿易を動かす仕事場」が近接して発展したハンブルク独特の都市構造を伝えています。

現在のシュパイヒャーシュタットには、かつての倉庫を活用した博物館や文化施設、カフェなども入り、赤レンガの建物を外から眺めるだけでなく、内部へ入って港町の歴史に触れられる場所も増えています。散策では、運河越しに倉庫群を見渡せる橋の上や、水辺に立つレンガ建築の連なりが大きな見どころです。隣接する現代的なハーフェンシティまで歩けば、19世紀の倉庫建築とガラスを多用した現代建築が間近で向き合う、現在のハンブルクらしい景色も楽しめます。世界遺産について詳しく知りたい場合は、倉庫街のケッセルハウスに設けられた世界遺産インフォポイントを散策の起点にすると理解しやすいです。

観光では、倉庫街の運河を小型船で巡るクルーズも人気ですが、水位によって橋の下を通れず、倉庫街の水路へ入れない場合があります。船からの見学を予定する際は、その日の運航内容を事前に確認しておくと安心です。また、商館街の建物は博物館ではなく現役のオフィスとして使われているものが多いため、外観や公開されている中庭などを中心に見学するのが基本です。倉庫街には石畳や橋が多いので、徒歩でじっくり巡るなら歩きやすい靴が向いています。昼は赤レンガの細かな装飾を観察しやすく、夕方から夜は運河沿いの光が建物に映り、同じ街並みでも印象が大きく変わります。ハンブルクの世界遺産は、ひとつの記念建造物を見るというより、倉庫、商館、水路、橋を歩いてつなぎながら、港と貿易によってつくられた都市の歴史を味わう場所です。

  • シュパイヒャーシュタット(Speicherstadt/倉庫街)
    1885〜1927年に整えられた歴史的な港湾倉庫地区です。世界遺産の範囲には15の大型倉庫ブロック、6つの付属建築、運河、道路、橋などが含まれています。赤レンガの巨大な倉庫群が水路沿いに連なる、世界遺産の西側から南側を占める大きなまとまりです。
  • チリハウス(Chilehaus)
    商館街を象徴する建物です。フリッツ・ヘーガーの設計で1922〜1924年に建てられ、船首のように鋭く伸びる東側の外観と、クリンカー煉瓦を使った表現主義建築で知られています。
  • メスベルクホーフ(Messberghof)
    チリハウスとともにブルヒャルト広場周辺の景観を形づくる大型商館建築です。20世紀前半に発展したハンブルクのオフィス建築を伝えています。
  • シュプリンクホーフ(Sprinkenhof)
    1927〜1943年に3期に分けて建設された大型商館です。フリッツ・ヘーガー、ハンス・ゲルソン、オスカー・ゲルソンらが設計に携わり、商館街でも特に規模の大きな建物です。
  • モーレンホーフ(Mohlenhof)
    ブルヒャルト広場周辺を構成する商館建築のひとつです。レンガを生かした近代的な外観を持ち、商業都市ハンブルクの発展を伝えています。
  • モンターホーフ(Montanhof)
    コントーアハウス地区を代表する大型オフィス建築のひとつです。港湾や貿易に関わる企業のためにつくられた商館街の性格を伝える建物として登録範囲に含まれています。
  • 旧郵便局建物・ニーデルン通り10番地(Former Post Office Building at Niedernstrasse 10)
    ニーデルン通りに建つ旧郵便局の建物です。世界遺産登録時に評価されたコントーアハウス地区の8つの主要建築のひとつです。
  • コントーアハウス・ブルヒャルト通り19-21番地(Kontorhaus Burchardstrasse 19-21)
    ブルヒャルト通りに建つ商館建築です。チリハウスなどとともに、20世紀前半に広がった近代的なオフィス街の一部を形づくっています。
  • ミラマールハウス(Miramar-Haus)
    コントーアハウス地区の主要商館建築のひとつです。レンガを主体とした近代建築がまとまって残る地区の価値を支えています。
住所 Alter Wandrahm 4, 20457 Hamburg, ドイツ
電話 040 688757600

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