【アナザースカイ】森川葵さんがバルセロナで訪れた場所

アナザースカイ 2026/10/24放送

森川葵さんがバルセロナで訪れた場所

チュロスの老舗

「Granja La Pallaresa」

スペイン・バルセロナの旧市街、ゴシック地区のペトリチョル通りに店を構えるGranja La Pallaresaは、1947年創業のチョコレート専門の喫茶店です。濃厚なホットチョコレートとチュロスで知られ、地元の人々や観光客が朝食や午後のおやつを楽しみに訪れます。ペトリチョル通りは、古くからチョコレート店や画廊が集まることで知られる細い路地です。歴史を感じさせる街並みの中に、バルセロナの伝統的な喫茶文化を今に伝えるGranja La Pallaresaが店を構えています。

Granja La Pallaresaの歴史は、1947年にマジ・カセス(Magí Cases)と妻のロゼール(Roser)が、それまで牛乳を販売していた店を喫茶店に改装したことから始まりました。かつては建物の奥で牛を飼い、搾りたての牛乳を販売していたという興味深い歴史が残されています。創業者のマジ・カセスは、カタルーニャ北西部のパリャルス地方出身で、店内には故郷の山々や牛を写した写真も飾られています。2000年には、長年この店で働いていたペペ・マトス(Pepe Matos)とクリストバル・テンリャード(Cristóbal Tenllado)が経営を引き継ぎました。その後も家族によって伝統が守られ、創業当時から親しまれてきた味を受け継いでいます。

店内は昔ながらの落ち着いた雰囲気で、大理石のテーブルや壁に飾られた絵画が印象的です。白いシャツに黒いズボン、蝶ネクタイを身に着けたスタッフの姿も、この店ならではの光景です。長い歴史の中で培われてきた接客スタイルと、温かいチョコレートを楽しむ人々の姿が重なり、古き良きバルセロナの喫茶文化を感じられます。

看板メニューは、カップにたっぷりと注がれた濃厚なホットチョコレートです。スペインのホットチョコレートは、日本で一般的なココアとは異なり、とろりとした濃厚な口当たりが特徴です。揚げたチュロスをチョコレートに浸して食べるチョコラテ・コン・チュロスは、ぜひ味わいたい定番の組み合わせです。チュロスの香ばしさとチョコレートの濃厚な甘さがよく合い、バルセロナらしいおやつの時間を楽しめます。

もうひとつの名物が、ホットチョコレートにたっぷりの生クリームをのせたスイソ(Suizo)です。店内で泡立てた生クリームがカップの上にこんもりと盛られ、見た目にも印象的な一品です。濃厚なチョコレートとふんわりとしたクリームの組み合わせは、長年にわたり多くの人々に親しまれてきました。チョコレートには、軽いスポンジ生地の焼き菓子メランドロス(Melindros)や、渦巻き状の菓子パンエンサイマーダ(Ensaimada)を合わせることもできます。

チョコレート以外にも、カタルーニャ地方に伝わる伝統的なデザートが充実しています。表面の砂糖をキャラメリゼしたクレマ・カタラーナは、レモンの皮とシナモンで香りをつけたカスタードのデザートです。また、アーモンドミルクと米粉を使ったメンジャ・ブラン(Menjar Blanc)は、中世から伝わるカタルーニャの伝統菓子です。かつての牛乳販売店としての歴史を感じさせるマト・デ・ペドラルベス(Mató de Pedralbes)も見逃せません。こちらは、ペドラルベス修道院の修道女たちに伝わる製法を受け継いだ乳製品のデザートです。

Granja La Pallaresaを訪れたら、周辺の街歩きも楽しみたいところです。ペトリチョル通りには画廊やチョコレート店が点在し、近くには歴史あるサンタ・マリア・デル・ピ教会も建っています。店は午前と午後に分けて営業しており、午後のおやつの時間には行列ができることも少なくありません。旧市街の散策途中に立ち寄り、温かなチョコレートを味わいながら、バルセロナの人々が大切にしてきた甘いひとときを楽しめる喫茶店です。

  • チュロス
住所 スペインCarrer de Petritxol, 11 08002 Barcelona
電話 (+34) 933022036

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連日繁盛するタパスバル

「Cerveseria El Vaso de Oro」

スペイン・バルセロナの海に近いラ・バルセロネータ地区に店を構えるCerveseria El Vaso de Oroは、1962年創業のビールとタパスの専門店です。バルボア通りに面したこの店は、ビールの注ぎ方にこだわることで知られ、地元の人々に長く親しまれてきました。細長い店内には大きな木製のカウンターが伸び、立ち飲みやカウンター席でビールと料理を楽しむ昔ながらのスタイルが受け継がれています。活気に満ちた店内では、バルセロナの伝統的なバル文化を身近に感じられます。

Cerveseria El Vaso de Oroの歴史は、1962年にガブリエルとグロリアの夫妻が、かつての映画館「シネ・マリーナ」の裏手にビアホールを開いたことから始まりました。ドイツ風の雰囲気を取り入れた店内には、当時としては珍しい長いカウンターが設けられました。その後、息子のガブリエル・フォルトが経営を受け継ぎ、質の高いビールとタパスを楽しめる店として発展させました。現在では3世代にわたる家族経営の店となり、創業当時の伝統を大切に守り続けています。

この店の大きな魅力は、何といってもビールへのこだわりです。独自に醸造するセルベッサ・フォルト(Cervesa Fort)をはじめ、さまざまな種類のビールを楽しめます。定番のクラシカ(Clásica)やピルスナー(Pilsen)、黒ビールのネグラ(Negra)、インディアン・ペール・エール(Indian Pale Ale)などがそろい、好みに合わせて選べるのもうれしいところです。ビールは細長いグラスのフラウタ(Flauta)やフィロ(Filo)、ジョッキのハラ(Jarra)で楽しめます。スタッフがビールサーバーから丁寧に注ぐ様子も、この店を訪れる楽しみのひとつです。

料理は、素材のおいしさを生かしたシンプルなタパスが中心です。なかでも看板料理として知られるのが、ソロミージョ・コン・フォア・イ・セボージャ(Solomillo con foie y cebolla)です。牛フィレ肉にフォアグラと玉ねぎを合わせた一品で、肉のうま味とフォアグラの濃厚な味わいを楽しめます。鉄板で焼き上げる料理を得意とする店ならではの名物で、ビールとともに味わいたい料理です。

定番のタパスも充実しています。パタタス・ブラバス(Patatas Bravas)は、揚げたジャガイモにピリ辛のソースとマヨネーズを添えたスペインの代表的な小皿料理です。クロケタス・デ・コシード・デ・ポージョ(Croquetas de cocido de pollo)は、鶏肉の煮込みを使ったコロッケで、ビールのおつまみにぴったりです。また、小ぶりの青唐辛子を調理したピミエントス・デ・パドロン(Pimientos de Padrón)や、イカをアンダルシア風に揚げたカラマレス・フリートス・ア・ラ・アンダルサ(Calamares fritos a la andaluza)なども人気の定番料理です。

海に近いラ・バルセロネータ地区らしく、魚介料理が豊富なのも特徴です。新鮮なマグロの鉄板焼きやアンコウ、タラ、イカなど、魚介の持ち味を生かした料理がそろいます。カンタブリア海産のアンチョビや、オリーブオイルに漬けたマグロなど、冷たい小皿料理も充実。食事の締めくくりには、アーモンドを使った伝統菓子タルタ・デ・サンティアゴ(Tarta de Santiago)やチーズケーキも楽しめます。

店内を見渡すと、重厚な木製の内装や装飾タイル、温かな照明が印象的です。伝統的な制服を身に着けたスタッフがカウンターの内側を行き交い、ビールを注ぎながら次々と注文をさばく姿には、昔ながらのバルの活気が感じられます。席の多くはカウンターを中心とした造りで、近くに立つ人々の会話や料理を運ぶ音も、この店ならではの雰囲気をつくっています。

Cerveseria El Vaso de Oroは、地下鉄L4線のバルセロネータ駅から歩いて訪れやすく、旧港や海辺を散策する途中の食事にもおすすめです。予約は受け付けていないため、混雑する時間帯には席が空くのを待つことも。観光地として知られるバルセロナの中で、地元の人々が日常的に楽しんできたビールとタパスの文化に触れられる、歴史あるビアホールです。

  • サーロインステーキのフォアグラのせ
住所 スペインCalle de Balboa, 6, 08003 Barcelona
電話 (+34) 933193098

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地中海料理のお店

Amades Restaurant

スペイン・バルセロナの旧市街、ゴシック地区に店を構えるAmades Restaurantは、伝統的な地中海料理に現代的なアレンジを加えた料理を楽しめるレストランです。バニス・ノウス通り(Carrer dels Banys Nous)の8番地にあり、カタルーニャ地方の食文化を大切にしながら、さまざまな国の調理法や食材を取り入れた独創的な料理を手がけています。歴史を感じさせる建物の中で、タパスから本格的な米料理まで幅広く味わえる、旧市街の散策途中にも立ち寄りたい一軒です。

Amades Restaurantの店内は、古い建物の趣を生かした落ち着いた空間です。石造りの壁や木製の梁、装飾が施された階段など、歴史あるゴシック地区の雰囲気を感じさせる内装が印象的です。大きな鏡や温かな照明、ゆったりとした椅子が置かれた客席には、昔ながらのバルの親しみやすさと現代的なレストランの心地よさが共存しています。料理を少しずつ分け合いながらワインを楽しむことも、しっかりと食事を味わうこともでき、さまざまな場面で利用しやすいお店です。

料理の特徴は、スペインやカタルーニャ地方の伝統料理を基本としながら、異なる食文化の要素を組み合わせていることです。肉や魚介、野菜などの食材を生かし、ソースや付け合わせに工夫を凝らしたメニューがそろいます。昔ながらの料理をそのまま再現するだけでなく、意外な食材の組み合わせによって新しい味わいを生み出しているのが魅力です。ワインにも力を入れており、伝統的なワインに加えて、自然派ワインの豊富な品ぞろえでも知られています。

ぜひ味わいたいのが、スペイン料理の定番である米料理です。アロス・デ・パト(Arroz de pato)は、鴨肉のコンフィと季節のキノコを合わせた一品です。鴨肉のうま味を生かした米料理に、自家製のアリオリソースを添えています。じっくり火を通した鴨肉とキノコの組み合わせは、魚介のパエリアとはひと味違った味わいを楽しめます。

魚介を使った米料理では、アロス・デ・ガンバス(Arroz de gambas)も見逃せません。エビやイカ、貝類を組み合わせた料理で、魚介のうま味をたっぷりと味わえる一品です。メニューには日本のかつお節を取り入れた組み合わせも見られ、地中海料理を基本としながら世界の食材を柔軟に取り入れる、この店らしい発想が感じられます。

タパスの中では、クロケタス・デ・パタタ(Croquetas de patata)が特徴的です。ジャガイモを使ったクロケタスに、マリネしたマグロの刺身とピリ辛のマヨネーズを組み合わせています。スペインの定番料理であるクロケタスと、日本でもなじみのある刺身を合わせた、遊び心のある一皿です。ベレンヘナ・アサダ(Berenjena asada)は、焼いたナスにピキージョピーマンのフムス、松の実、ザクロ、コリアンダー、ミントを添えた野菜料理です。ナスのやわらかな食感に、ナッツの香ばしさやハーブの爽やかな風味が重なります。

肉料理では、コチニージョ・デスウエサド(Cochinillo deshuesado)も注目したい一品です。骨を取り除いた子豚の肉を調理し、ソースと付け合わせの野菜を添えた料理で、香ばしい表面とやわらかな肉の食感を楽しめます。また、赤ワインで煮込んだ仔牛肉を詰めたカネロン・デ・テルネラ(Canelón de ternera)は、カタルーニャ地方でも親しまれているカネロニをアレンジした料理です。ベシャメルソースとパルメザンチーズを合わせた、風味豊かな仕上がりが特徴です。

食事の前には、トマトをパンにすり込んでオリーブオイルとともに味わうパン・コン・トマテ(Pan con tomate)や、イワシを使ったトスタ・デ・サルディナ(Tosta de sardina)などの小皿料理も楽しめます。デザートには、なめらかなフラン・クレモソ(Flan Cremoso)や、黒ビールを使ったスポンジケーキにチョコレートクリーム、オリーブオイル、塩を合わせたスイーツなどがそろい、最後まで独創的な組み合わせを味わえます。

Amades Restaurantの周辺には、バルセロナ大聖堂やサン・ジャウマ広場など、旧市街を代表する観光名所が集まっています。石畳の細い路地を歩きながら中世の面影を残す街並みを巡り、食事の時間には温かな雰囲気のレストランでゆっくり過ごすのもおすすめです。料理や営業時間は変更されることがあるため、訪問前に最新情報を確認しておくと安心です。歴史あるゴシック地区の街並みとともに、伝統と創意工夫が重なるバルセロナの現代的な食文化を楽しめるレストランです。

  • シーフードパエリア
住所 Carrer dels Banys Nous, 8, Loc, Ciutat Vella, 08002 Barcelona, スペイン
電話 934 76 50 47

ガウディ建築

グエル邸

スペイン・バルセロナの旧市街、ラ・ランブラ通りからほど近いラバル地区に建つグエル邸(Palau Güell)は、世界的な建築家アントニ・ガウディが設計した都市型の邸宅です。実業家で政治家、芸術の支援者でもあったエウゼビ・グエルの依頼を受け、1886年から1890年にかけて建設されました。ガウディが若い頃に手がけた代表作のひとつで、石造りの重厚な外観と、独創的な空間構成が見どころです。1984年にはユネスコの世界遺産に登録され、現在は建築内部を見学できる文化施設として公開されています。

グエル邸が建てられたのは、バルセロナの街が産業の発展によって大きく変化していた19世紀末のことです。施主のエウゼビ・グエルは、繊維産業などで成功を収めた実業家で、当時まだ広く知られていなかったガウディの才能を高く評価していました。2人の関係は長く続き、後にグエル公園やコロニア・グエル教会などの建築にもつながっていきます。グエル邸は、エウゼビ・グエルが家族と暮らす住居であると同時に、客人を迎え、音楽会や社交の催しを開くための場所として計画されました。隣接するラ・ランブラ通り沿いの既存の家族住宅と通路でつながる構造も、建設当時の特徴のひとつです。

建物の正面には、馬車がそのまま出入りできるように設計された2つの大きな放物線状のアーチが並びます。鉄細工を施した門扉は、曲線を組み合わせた繊細な装飾が美しく、ガウディの卓越したデザイン感覚を感じさせます。外観は比較的落ち着いた印象ですが、一歩足を踏み入れると、石材や大理石、木材、ステンドグラス、金属装飾などを巧みに組み合わせた華やかな空間が広がります。伝統的な建築技法を使いながら、光の入り方や部屋同士のつながりまで緻密に考えられているのが特徴です。

地下には、かつて馬をつないでいた厩舎が残されています。レンガを積み上げた柱とアーチが連続する空間は、洞窟のような独特の雰囲気です。柱の上部にはキノコの傘を思わせる形が見られ、建物を支える構造そのものが美しい造形になっています。地上階から地下へ馬を導くための傾斜路も設けられており、19世紀の都市生活を支えていた設備と、ガウディの建築技術を同時に知ることができます。

邸宅の中心となるのが、吹き抜けの中央サロンです。高さのある空間を覆う放物線状のドームには小さな円形の開口部が設けられ、差し込む光が夜空に輝く星のように見えます。ドームの内側には赤みを帯びたアラバスターが使われ、光の変化によって豊かな表情を見せます。かつては音楽会や宗教的な行事も開かれ、室内には礼拝堂やオルガンも設けられていました。現在もオルガンが備えられ、音楽と建築が深く結びついていた当時の暮らしを感じられます。

上階には、グエル家が暮らしていた寝室や私的な空間が続きます。木製の格天井、装飾的な暖炉、色鮮やかなステンドグラスなど、部屋ごとに異なる意匠が施されているのも見逃せません。ガウディは室内装飾にも細心の注意を払い、家具や建具、照明に至るまで建物全体の調和を追求しました。豪華な素材を使いながらも、自然光を取り入れる工夫や空間の広がりを大切にした設計には、後の作品へとつながる建築思想が表れています。

グエル邸でも特に印象的なのが、屋上に並ぶ20本の煙突です。円錐形や螺旋状など、それぞれ異なる形に仕上げられた煙突は、陶器の破片やガラス、大理石などを組み合わせたモザイク装飾やレンガによって彩られています。これは、後のグエル公園などでも使われる、破砕した素材を貼り合わせる「トレンカディス」と呼ばれる技法の初期の実例です。屋上の中央には、中央サロンのドームを覆う高さ約15mの尖塔がそびえ、周囲の煙突とともに幻想的な風景をつくり出しています。屋上から眺めるバルセロナの街並みも魅力のひとつです。

グエル邸は、1984年にグエル公園、カサ・ミラとともに世界遺産に登録されました。2005年にはカサ・ビセンス、カサ・バトリョ、サグラダ・ファミリアの生誕のファサードと地下聖堂、コロニア・グエル教会地下聖堂が追加され、現在は7つの構成資産からなる世界遺産「アントニ・ガウディの作品群」として知られています。グエル邸は、ガウディが伝統的な建築様式と新しい構造技術を融合させ、独自の表現を確立していく過程を知るうえで重要な建築物です。

1945年には、エウゼビ・グエルの末娘メルセ・グエル・イ・ロペスが、文化的な目的で保存・活用することを条件に、邸宅をバルセロナ県議会へ寄贈しました。その後、修復と保存のための取り組みが重ねられ、現在では歴史的な建築空間を間近に見学できます。

グエル邸は地下鉄L3線のリセウ駅から徒歩で訪れやすく、ラ・ランブラ通りやリセウ大劇場と合わせて巡るのもおすすめです。見学にはオーディオガイドを利用でき、館内の構造や装飾について詳しく知ることができます。所要時間は60〜90分程度が目安です。屋上は雨や強風、極端な暑さによって閉鎖される場合があり、地下の厩舎と屋上は車椅子での見学に対応していないため注意が必要です。重厚な石造りの外観から華やかな屋上まで、ガウディの豊かな想像力と建築技術を一度に楽しめる、バルセロナを代表する歴史的建築物です。

住所 Carrer Nou de la Rambla, 3-5, Ciutat Vella, 08001 Barcelona, スペイン
電話 934 72 57 75

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サン・ポル・ダ・マール

スペイン北東部、カタルーニャ州バルセロナ県のマレスメ地方にあるサン・ポル・ダ・マール(Sant Pol de Mar)は、地中海に面した小さな海辺の町です。バルセロナの北東に広がるマレスメ海岸の一角にあり、白い家々が斜面に連なる美しい街並みと、穏やかな雰囲気で知られています。海岸沿いには砂浜や小さな入り江が続き、青い海を眺めながらのんびりと散策を楽しめます。かつて漁業や農業で栄えた町には、細い路地や昔ながらの家並みが残されており、観光地として発展した現在も、地中海沿岸の漁村らしい風景に出会えます。

サン・ポル・ダ・マールの歴史は古く、10世紀に存在したサン・パウ修道院を中心に集落が形成されたことに始まります。修道院についての最も古い記録は955年にさかのぼり、11世紀から14世紀にかけては、図書館や写本を制作する施設を備えた文化的な拠点として発展しました。1599年には近隣のサン・セブリアから独立して自治体となり、漁業やブドウ栽培、アメリカ大陸とのワイン貿易などを通じて成長します。1859年に鉄道が開通すると産業の発展が進み、20世紀初頭にはバルセロナの人々が夏を過ごす保養地として人気を集めるようになりました。現在も町の随所に、当時建てられた別荘や住宅が残されています。

町の歴史を象徴する建築物が、小高い丘の上に建つサン・パウ礼拝堂(Ermita de Sant Pau)です。町の名前の由来にもなった修道院の一部で、現在の礼拝堂は11世紀に建てられたロマネスク様式の建築を基礎としています。建物にはその後の時代に加えられた部分も残り、地下には6世紀にさかのぼるローマ・西ゴート時代の貴重な空間が保存されています。外観には石造りの素朴な美しさが感じられ、丘の上からは町の白い家並みと地中海を一望できます。天気のよい日には、遠くバルセロナ方面まで見渡せる眺望も魅力です。礼拝堂の内部を見学する場合は、事前の予約が必要です。

旧市街の中心部には、1590年に建てられたサン・ジャウマ教会(Església de Sant Jaume)も残されています。後期ゴシック様式の教会で、16世紀の見張り塔を鐘楼として利用しているのが特徴です。厚い石壁を持つ円形の塔からは、かつて海からの襲撃に備えていた町の歴史が感じられます。教会内部には17世紀の聖母マリア像や、スペインの彫刻家フアン・マルティネス・モンタニェスによる「ピエタ」などが収められています。通常は外観を見学でき、内部に入れるのは主にミサが行われる時間帯です。

サン・ポル・ダ・マールの街歩きでは、20世紀初頭に建てられたモデルニスモ建築にも注目です。カタルーニャ地方独自の芸術運動であるモデルニスモは、曲線や色鮮やかな装飾を取り入れた建築様式として知られています。町には建築家イグナシ・マス・モレル(Ignasi Mas Morell)が手がけた建物が数多く残り、1910年に開校した旧公立学校(Les Escoles)や、装飾的な外観を持つカン・プラニオル(Can Planiol)などが代表的です。色彩豊かなタイルやモザイク、繊細な鉄細工が施された建物は、漁村として発展してきた町に華やかな表情を添えています。

海辺の散策も、この町を訪れる大きな楽しみです。中心部に広がるプラジャ・ダ・ラス・バルカス(Platja de les Barques)は、漁船が砂浜に並ぶ風景で知られるビーチです。町の漁業の歴史を感じさせる場所で、海岸沿いには地中海らしい明るい景色が広がります。近くのプラジャ・ダ・ラス・エスカレータス(Platja de les Escaletes)やラ・プラジョラ(La Platjola)なども、入り組んだ海岸線と岩場が特徴的なビーチです。海岸には砂の粒が比較的大きい場所もあり、穏やかな日には海水浴や日光浴を楽しむ人々でにぎわいます。

海を眺めながら歩くなら、パセッチ・ダ・ラ・プンタ(Passeig de la Punta)がおすすめです。断崖と海の間に設けられた遊歩道で、医師フレデリック・フレストの構想によって整備されました。海岸線を見渡せる展望スポットとして親しまれ、周辺にはかつての別荘建築も残されています。町の人々にとっても大切な憩いの場所で、夏にはカタルーニャ地方の伝統舞踊サルダーナが踊られるなど、地域の催しの舞台にもなっています。さらに足を延ばせば、隣町カレーリャとサン・ポル・ダ・マールを結ぶ海沿いの散策路カミ・ダ・ロンダ(Camí de Ronda)も楽しめます。19世紀に海岸の監視や密輸の取り締まりを目的として整備された道を起源とし、地中海の自然に親しみながら歩けるルートです。

食文化の豊かさも、サン・ポル・ダ・マールの魅力です。海で水揚げされる魚介類と周辺の畑で育てられた野菜を生かしたカタルーニャ料理が親しまれています。また、この町は世界的に知られる料理人カルメ・ルスカイェーダ(Carme Ruscalleda)の故郷でもあります。1988年に夫のトニ・バラムとともに開いたレストランサン・パウ(Sant Pau)は、2005年にミシュランの3つ星を獲得し、カタルーニャ料理の魅力を世界に広めました。レストランは2018年に営業を終えましたが、土地の食材や伝統料理を大切にする彼女の姿勢は、町の食文化を語るうえで欠かせない存在です。

町では季節ごとに伝統的な祭りも開かれます。毎年1月にはサン・パウの冬祭り(Festa Major d’Hivern de Sant Pau)が催され、音楽や踊り、地元の料理を楽しむ催しなどでにぎわいます。なかでも「アルモラチャの踊り(Ball de l’Almorratxa)」は、町に受け継がれてきた伝統行事のひとつです。7月には聖ヤコブにちなんだ夏祭りサン・ジャウマ祭(Festa Major de Sant Jaume)が行われ、町の歴史と人々の暮らしに触れる機会となります。

サン・ポル・ダ・マールへは、バルセロナから海岸沿いを走る鉄道で訪れることができます。車窓から地中海を眺めながら移動できるのも楽しみのひとつです。町には坂道や階段が多く、海沿いのビーチでは季節や天候によって波の状況が変わるため、散策や海水浴の際には注意が必要です。夏の海水浴だけでなく、春や秋には歴史ある街並みを歩いたり、静かな海辺でゆったり過ごしたりするのもおすすめです。白い家並みと青い地中海、古い教会やモデルニスモ建築が調和したサン・ポル・ダ・マールは、カタルーニャ地方の海辺の暮らしと長い歴史を身近に感じられる町です。

住所 スペイン バルセロナ サン・ポル・ダ・マール


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カテゴリー: バルセロナ、齋藤飛鳥
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