近江鉄道水口城南駅から歩いておよそ十数分の場所にある蔵カフェ 薫蔵は、滋賀の酒文化を肌で感じられる特別なカフェです。こちらは、東海道五十三次の宿場町として栄えた水口の街道沿いに位置する、創業大正6年（1917年）の蔵元美冨久酒造が営んでいます。資材置き場として使われていた築80年ほどの歴史ある蔵の一部を、2021年9月に改装してオープンしました。お店の名前「薫蔵」には、日本酒の豊かな薫りが漂う空間で、日本の伝統や文化に触れてほしいという、蔵元の熱い想いが込められています。

店内に入ると、天井や太い柱などに、酒造りのために築かれた昭和初期の蔵の趣がそのまま残されており、その歴史と深みが訪れる人を優しく包み込みます。酒造りの現場で使われていた道具をリノベーションして飾られていたり、杜氏の方が手作りした温かみのあるテーブルや、仕込み用タンクの蓋をリメイクした個性的なテーブルが配置されていたりと、酒蔵ならではの工夫が随所に見られます。また、店内に流れるBGMは、スタッフの方々が持ち寄ったレコードで、懐かしい音色が響きわたり、ゆったりとした心地良いひとときを演出しています。蔵元では、もともと大人の方がお酒を買いに来る場所というイメージが強かったため、若い世代やお子さん連れのご家族にも酒蔵に親しみを持ってもらい、日本酒文化を身近に感じてほしいという願いから、このカフェが誕生したそうです。お店では、お冷やや調理に、お酒の仕込み水と同じ清らかな水を使っているのも、蔵元直営ならではの嬉しいおもてなしです。

このカフェの看板メニューは、酒文化を通じて感じてきた滋賀県の魅力を伝える食材をたっぷり使ったランチプレートです。特に、ランチに添えられるご飯は、酒造りに使われている酒米を炊き上げており、時期によっては三種類の酒米の食べ比べを楽しめる酒米のおにぎりとして提供されています。お米のプロである蔵元だからこそできる、他ではなかなか味わえない珍しい一品として評判です。また、日本酒を飲まない方でも蔵元の文化を楽しめるように、酒造りの知恵が詰まった甘酒や酒粕を使ったデザートメニューも豊富です。季節によって中身やトッピングが変わる薫蔵特製気まぐれプリンや、自家製甘酒を使ったソフトクリームを添えた薫蔵パフェなどは、幅広い層のお客様から人気を集めています。

ランチプレートのメイン料理には、竜王町のブランド豚である蔵尾ポークや滋賀県産の岡喜牛を贅沢に使った酒粕手ごねハンバーグ、高島市の名物料理であるとんちゃん焼など、地元の厳選素材にこだわった品々が並びます。さらに、滋賀の特産品として知られる鮒ずしや赤こんにゃく、ビワマスなど、近江の美食を少しずつ味わえる盛り合わせが付いているのも魅力で、滋賀県外からのお客様にも喜ばれています。そして、ぜひ味わっていただきたいのは、創業時から蔵元に伝わる粕汁です。この粕汁は、深い味わいで体も心も温めてくれますが、暑い季節には冷やし粕汁として提供されることもあり、季節に合わせた楽しみ方ができます。また、夏には麹（こうじ）をたっぷり使った、ふわふわの薫蔵のかき氷も登場するなど、訪れるたびに新しい味わいに出会えるのも嬉しいところです。カフェに隣接する直売所では、美冨久酒造の日本酒はもちろん、ノンアルコールの甘酒なども販売されていますので、お食事の後に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

1917年（大正6年）創業の、百年以上にわたり近江の地酒を醸し続けてきた老舗の蔵元です。
美冨久酒造は、豊かな自然、清らかな水、そして職人の技が織りなす「深く、やさしく、心に残る味わい」を追求し、伝統的な製法である山廃仕込みと、現代の技術を極めた吟醸仕込みを二本柱として酒造りを行っています。特に、若き蔵人たちが立ち上げた新ブランド「三連星（さんれんせい）」は、フルーティーでキレのある味わいで、近年大きな注目を集めています。
蔵元直営の「蔵カフェ 薫蔵～KAGURA～」が併設されており、お酒造りの過程で生まれる酒粕や酒米、そして地元の特産品をふんだんに使用した、酒蔵ならではのユニークなランチを提供しています。
滋賀県産の食材へのこだわりと、酒蔵ならではの工夫が詰まったプレートが特徴です。
すべてのプレートには、週替わりの酒米ご飯（食べやすく炊き方を工夫）と、滋賀の食材のおかずプレート（鮒ずし、ビワマスの燻製、赤こんにゃくなどから選択・提供される）がついてきます。