浅草の賑やかなエリアから少し奥まった橋場の地に、芸術鑑賞とワインの魅力がひとつになったユニークな空間Atelier Cork & Tip（アトリエ コルク＆チップ）がございます。こちらは、シニアソムリエの資格を持ち、コルクアーティストとしても活動されている久保友則さんが営むアートギャラリー兼ワインバーです。久保さんは、ソムリエとしてワインに関わる仕事を続ける中で、役目を終えて捨てられてしまう大量のコルクを目の当たりにし、これに新しい価値を与えられないかと考えました。そうした思いから、コルクを再利用したモザイクアート「コルクアート」の制作を始められたのが2014年ごろのことです。そして、「ワインとコルクアート」という他に類を見ないコンセプトのお店を、2021年7月にオープンされました。店内には、廃棄物から生まれたとは思えないほど精巧で、生命力に満ちたアート作品が並び、訪れる人々を異世界に誘うような独特の雰囲気が流れています。

このお店の最大の魅力は、久保さんの手で生み出される「コルクアート」の展示空間そのものが、ワインバーとして機能している点にあります。作品は、ワインに染まったコルクの濃淡を活かして、まるで点描画のように表現されており、一枚の肖像画にはおよそ2,000個ものコルクが使われているそうです。コルクひとつひとつの刻印までもが見えるほど緻密に作られたアート作品は、ワインの廃材から新たな価値を創造するという、久保さんの強い思いを体現しています。この「コルクアートで世界と繋がる」というテーマは、国内外で注目を集め、NHK Worldなど複数のメディアで紹介された実績もあります。浅草という土地にいながらにして、世界の文化や歴史への好奇心を掻き立てられるような、特別な時間を過ごすことができるでしょう。

お飲み物としては、ワインのエキスパートである久保さんが厳選した世界各国のワインを味わえます。ソムリエとして長年の経験を持つ久保さんが、アートに囲まれた空間で、その時々におすすめの銘柄をセレクトしてくださいます。また、ワインとともに楽しむことができるおつまみも充実しています。ワインの豊かな香りと深い味わいを引き立てる、質の高いおつまみとアートの相性をゆっくりと堪能できます。

さらに、アートとワインの融合を象徴する商品として、久保さんのコルクアート作品がラベルを飾ったオリジナルワインも扱っています。オンラインショップでは、ワインを愛する人々が提供した思い出のコルクが集まり結晶化した作品がラベルになったものや、世界各国から厳選された熟成ワインに出会えます。この活動は、日本全国260ヵ所以上ものレストランやホテルなどからコルクの提供を受けて成り立っており、ワインを通して生まれたつながりが、アートとして循環しているのです。この場所は、単にワインを飲むだけでなく、コルクに込められた「ワインのある暮らし」の思い出や、生産者の営みをアートと共に見つめ直すことができる、奥深い魅力を持った空間です。

久保さんの独自の視点から生まれたコルクアートとワインの出会いが、訪れる人々にもまた新たな交流と発見をもたらし、浅草の奥地で静かに特別な時間を提供しています。駅から少し歩いた場所にありますが、その道のりもまた、喧騒を離れた穏やかな浅草の日常を感じる、心豊かなひとときになるでしょう。