東急大井町線等々力駅からわずか徒歩数分の場所にありながら、一歩足を踏み入れれば、都会の喧騒が嘘のように消え失せ、清々しい空気と豊かな緑に包まれる別世界が広がります。

等々力渓谷は、多摩川の支流である谷沢川が国分寺崖線を浸食して形成された、都内唯一の渓谷です。その全長は約1kmにも及び、渓谷内には約30カ所以上もの湧水が点在し、湿潤な環境を育んでいます。この豊かな水源と地形が、ケヤキやコナラといった多様な樹木、そしてシダなどの湿性植物が茂る、まさに「都会のオアシス」とも呼ばれる自然豊かな景観を生み出しています。東京都の「名勝」にも指定されており、その景観の美しさは折り紙付きです。

渓谷への入口は、東急大井町線等々力駅から歩いてすぐの「ゴルフ橋」のたもとにあります。階段を下りていくと、ひんやりとした空気が肌を撫で、川のせせらぎが心地よく耳に届きます。夏には外の暑さを忘れさせてくれるほどの涼しさで、まさに天然のクーラー。キラキラと木漏れ日が差し込む遊歩道を、川沿いにゆっくりと散策するのがおすすめです。

この渓谷の魅力は、単なる自然美だけにとどまりません。遊歩道の途中には、歴史を感じさせるスポットが点在しています。例えば、「等々力渓谷3号横穴」は、7世紀に造られたとされる全長約13mの横穴墓で、当時の有力者が埋葬されていたと考えられています。渓谷が古代からこの地にあったことを示唆する貴重な文化資源であり、歴史好きにはたまらないでしょう。

さらに、渓谷の南側には、見どころの一つである「等々力不動尊」が鎮座しています。平安時代後期、真言宗中興の祖である興教大師覚鑁が夢のお告げにより開いたと伝えられる霊場で、境内には「不動の滝」が流れています。この滝の轟くような音が、「等々力」という地名の由来になったという説もあるほどです。等々力不動尊からは、渓谷全体を見渡せる展望台もあり、特に春の桜や秋の紅葉の時期は、息をのむような絶景が広がります。

「等々力不動尊」は、都心にありながら豊かな自然と歴史が息づく、まさに心のオアシスと呼べる場所です。
等々力渓谷の清らかな流れと「不動の滝」の荘厳な響きに包まれたこの寺院は、平安時代末期に興教大師によって開かれたと伝わる由緒ある霊地。
その歴史は古く、室町時代には世田谷城主・吉良氏の祈願寺として再興され、信仰を集めてきました。
特に注目すべきは、数寄屋建築の巨匠である吉田五十八氏が手掛けたと言われるご本堂。周囲の自然と調和しながらも、その洗練された美しさは訪れる人々を魅了します。
境内を彩る四季折々の花々、春の桜、秋の燃えるような紅葉は、訪れる時期によって異なる表情を見せ、都会の喧騒を忘れさせてくれる安らぎの空間を提供しています。
商売繁盛、交通安全、厄除け、縁結びなど、様々な願いを叶えるパワースポットとしても知られ、等々力駅から徒歩圏内というアクセスの良さも魅力の一つです。

JRA馬事公苑は、都会の喧騒を忘れさせる広大な緑地と、日本の馬事文化の中心地としての役割を兼ね備えた唯一無二のスポットです。
2023年11月に大規模な整備を終え、新たな姿で再開苑したこの施設は、馬と人との共生をテーマに、誰もが気軽に馬に親しみ、豊かな自然を満喫できる空間へと生まれ変わりました。

馬事公苑の歴史は古く、1940年（昭和15年）に日本の馬術選手育成を目的として開苑しました。
幻となった1940年の東京オリンピック、そして1964年と2020年の二度の東京オリンピック・パラリンピックでは馬術競技の会場となるなど、長きにわたり日本の馬術競技の拠点としての役割を担ってきました。
苑内には、西竹一中佐と愛馬ウラヌス号に敬意を表した煉瓦装飾も施されており、その歴史の深さを感じさせます。
オリンピックテラスの石段には、過去のオリンピック開催年と場所が刻まれており、馬術の歴史を肌で感じることができます。

現在の馬事公苑は、「馬術の殿堂」として、JRAホースショーをはじめとするトップレベルの馬術競技会やイベントが開催される一方で、「馬と親しむ緑の都市公園」としての機能も充実しています。
広々とした天然芝の「はらっぱ広場」は、かつてオリンピックの馬術競技が行われた「グラスアリーナ」が前身で、ピクニックを楽しむ家族連れで賑わいます。
武蔵野の面影を残す「武蔵野自然林」では、四季折々の自然を散策しながら心癒されるひとときを過ごせます。
また、最新の遊具を備えた「子ども広場」は、円になって向かい合えるブランコなど、子どもたちが安全に思い切り遊べる工夫が凝らされており、家族で訪れるには最適な環境です。
苑内では、乗用馬や元競走馬、ポニーなど様々な馬たちが暮らしており、運が良ければ調教中の馬や、敷地内の道を散歩する馬たちに遭遇することもあります。
イベント時には体験乗馬や馬車運行なども行われ、間近で馬と触れ合える貴重な機会が提供されます。
地域防災拠点としての役割も担っており、災害時には広域避難所となる点も、この施設の多面的な価値を示しています。