鳥取県西部にそびえ立つ中国地方最高峰、霊峰大山（だいせん）。その懐深く、鬱蒼とした森に包まれるように鎮座するのが、全国的にも珍しい山岳信仰の拠点、「大神山神社奥宮（おおがみやまじんじゃおくのみや）」です。ここでは、ただ圧倒的な自然の美しさを感じるだけでなく、古くから人々が神聖視してきた大山の歴史と信仰の深さに触れることができます。
大神山神社奥宮は、その名の通り、大山全体を御神体とする大山信仰の中心地であり、麓にある大神山神社本社（おおがみやまじんじゃほんしゃ）と対をなす存在です。

大神山神社奥宮の歴史は古く、大山そのものを神と崇める大山信仰に深く根差しています。
古くは大山が「大神岳」または「大神山」と呼ばれており、この地が神を祀る場として位置づけられていました。
奈良時代には修験道、さらに仏教が入り込み、神仏習合の思想のもとで大山は大智明権現（だいちみょうごんげん）として信仰を集めます。
平安時代には奥宮を中心に三院百八十坊、僧兵三千を擁する西日本有数の霊山として栄え、その勢力は絶大でした。

しかし、明治8年（1875年）の神仏分離令により、大山寺は解体され、大神山神社奥宮は純然たる神社として独立しました。
現在残る社殿は、文化2年（1805年）に再建されたもので、その壮麗な姿は江戸時代後期の建築技術の粋を集めたものとして、国指定重要文化財に指定されています。
この社殿は、権現造り（ごんげんづくり）と呼ばれる、本殿・幣殿（へいでん）・拝殿が一体となった建築様式で、その規模は日本最大級を誇ります。
特に目を引くのは、正面に伸びる約50メートルにも及ぶ長廊で、両翼を広げたような雄大な姿は圧巻です。
内部には、柱や長押（なげし）に施された「白檀塗（びゃくだんぬり）」が美しく輝いています。
これは銀箔の上に透き漆を塗ることで独特の銅色を出す技法で、これだけ大規模な白檀塗りが施された社殿は非常に珍しく、「日本一美しい白檀の漆塗り」と称されることもあります。
また、格天井には234枚もの花鳥風月や人物が描かれた天井絵が飾られ、絢爛豪華な世界が広がっています。当時の人々の生活模様を垣間見ることができる貴重な資料でもあります。

鳥取県東伯郡湯梨浜町に位置する日本最大級の本格的な中国式庭園です。鳥取県と中国河北省の友好のシンボルとして建設され、1995年に開園しました。
その名の通り、中国河北省にある承徳の避暑山荘をモデルに設計されており、広大な敷地には中国の伝統的な建築様式と庭園美が見事に再現されています。
燕趙園の最大の特徴は、その規模と細部にわたるこだわりです。
総面積は約1万平方メートルにも及び、園内には「四方湖」と呼ばれる大きな池を中心に、趣の異なる回廊、楼閣、亭、橋などが点在しています。
これらの建築物は、中国から招かれた職人たちの手によって、資材も中国から運び込まれて建設されました。
そのため、石材や瓦、彫刻の一つ一つに至るまで、中国の伝統的な技法と素材が用いられており、まるで中国にいるかのような錯覚を覚えます。

特に目を引くのは、正門を入ってすぐに見える「天湖閣」です。これは中国河北省の承徳避暑山荘にある「煙波致爽殿」を模しており、堂々とした佇まいは訪問者を圧倒します。
また、園内を巡ると、奇岩が配された枯山水庭園や、色鮮やかな花々が咲き誇る花壇、そして精巧な彫刻が施された石灯籠など、見どころが尽きません。
これらの要素が一体となり、中国の壮大な自然と歴史、文化を凝縮したような空間が創り出されています。

燕趙園の魅力は、単に美しい景色だけではありません。
園内では、中国民族衣装の体験や、中国茶の試飲、中国雑技の公演など、中国文化に触れることができる様々なイベントが開催されています。
これらの体験を通じて、訪問者は視覚だけでなく、五感で中国文化を深く理解することができます。
特に、定期的に開催される中国雑技公演は人気が高く、アクロバティックな演技や変面ショーなど、迫力満点の内容に多くの観客が魅了されます。

燕趙園が建設された背景には、鳥取県と中国河北省の友好関係があります。両県省は1986年に友好提携を結び、以来、経済、文化、教育など多岐にわたる分野で交流を深めてきました。
燕趙園はその友好の証として、両者の協力によって実現したプロジェクトです。
設計から資材の調達、建設に至るまで、中国側の専門家が深く関与し、本場の中国庭園を日本に再現するという熱意が注がれました。
このため、燕趙園は単なる観光施設ではなく、日中友好の架け橋としての役割も担っています。

日本海に面した東西約16km、南北約2.4kmにわたる広大な砂の世界です。その雄大な景観は、風によって刻々と表情を変え、訪れる人々を魅了してやみません。
国の天然記念物にも指定されており、山陰海岸ジオパークの重要な構成要素の一つでもあります。

鳥取砂丘の最大の特徴は、その規模と、風と砂が織りなすダイナミックな景観です。
季節や時間帯、天候によってその姿を変えるため、何度訪れても新しい発見があります。

まず注目すべきは、「砂簾（されん）」と呼ばれる風紋です。これは風によって砂の表面にできる美しい波模様で、早朝や風の穏やかな日に見ることができます。
繊細な砂簾は、自然が作り出す芸術品そのものです。特に、日の出や日の入りの時間帯には、太陽の光が砂紋に陰影を与え、一層幻想的な光景が広がります。

次に、砂丘の最高地点である「馬の背」からの眺望は圧巻です。日本海と広大な砂丘が一体となったパノラマは、まさに息をのむ絶景。
ここからは、青い海と黄色い砂、そして空のグラデーションが織りなすコントラストを存分に堪能できます。
特に晴れた日には、遠く水平線まで見渡せる開放感が得られ、非日常的な体験となるでしょう。

また、鳥取砂丘は、その地形が独特の生態系を育んでいます。砂丘の厳しい環境に適応した植物や昆虫など、ここでしか見られない生き物たちが息づいています。例えば、砂地に適応したハマナスやコウボウムギなどの植物は、砂丘の景観に彩りを添えています。運が良ければ、砂丘に生息する珍しい昆虫に出会えるかもしれません。

さらに、鳥取砂丘では様々なアクティビティを楽しむことができます。定番の砂丘ウォークはもちろんのこと、ラクダに乗って砂漠の雰囲気を味わったり、砂丘を滑り降りるサンドボードに挑戦したりと、多彩な体験が可能です。特にサンドボードは、砂丘ならではのスリルと爽快感を味わえる人気のアクティビティです。冬には、雪が積もった銀世界の中で「雪上砂丘」という幻想的な光景を見ることもでき、季節ごとの魅力があります。