ドイツ北東部、メクレンブルク＝フォアポンメルン州の州都シュヴェリーンは、複雑に入り組んだ湖と豊かな自然に囲まれた美しい街です。
この地が誇る「シュヴェリーンの邸宅群」は、2024年にユネスコ世界遺産に登録され、世界中の注目を集めています。
おとぎ話から飛び出したかのような優美なシュヴェリーン城を中心に、湖と広大な庭園、そして歴史的な建造物が一体となった、まさに“生きた”世界遺産です。

「北のノイシュヴァンシュタイン城」と称される、シュヴェリーンの歴史と美
この世界遺産は、シュヴェリーン湖の小島に建つ壮麗なシュヴェリーン城と、その周囲に広がる庭園、そして市街地に点在する30以上の歴史的建造物群から構成されています。
この複合的な景観が、19世紀のドイツにおける歴史主義建築の傑出した例として高く評価されたのです。
シュヴェリーン城は、中世の要塞跡に19世紀に再建された、まさにこの世界遺産の中核をなす存在です。フランスのルネサンス建築であるシャンボール城をモデルに、ネオ・ルネサンス様式で再構築されたその姿は、「北のノイシュヴァンシュタイン城」とも称されるほどの美しさを誇ります。湖に浮かぶように建つその姿は、時間帯や季節によって異なる表情を見せ、訪れる人々を魅了し続けています。

世界遺産としての真価は、このシュヴェリーン城の壮麗さだけではありません。「邸宅群」という名称が示す通り、城と一体となって独自の価値を生み出しているのが、周辺の構成資産です。
城の周辺に広がる広大な宮殿庭園は、19世紀に造園家ペーター・ヨーゼフ・レネの設計により整備されたもので、大通りや噴水、彫刻などが配置されたバロック様式の美しい景観を楽しむことができます。
また、旧官庁や劇場、博物館といった建造物も邸宅群の一部として登録されており、かつてメクレンブルク大公国の首都であった時代の行政、文化、政治の中心としての役割を今に伝えています。

特筆すべきは、これらの歴史的建造物の多くが、現在も現役で活用されている点です。
シュヴェリーン城は現在、メクレンブルク＝フォアポンメルン州の州議会議事堂として機能しており、一部が博物館として公開されています。
また、かつての大公の離宮が保育園として使われているなど、過去の遺産が市民の暮らしに溶け込み、価値を守り続ける「生きる世界遺産」としての側面も高く評価されています。